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遺言書は書いた方が良いのか、また自筆証書遺言と公正証書遺言のメリットとデメリットなどについて解説

2023年11月7日

 

 

生きているうちに遺言書を書こうと思う人もいるかと思いますが、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いやメリット・デメリット、書く時に注意することなどがありますので解説していきます。

■なぜ遺言書を書く必要があるの?

「なぜ遺言書を書く必要があるのか?」と考えた時、「特定の子どもに全財産を相続させたいから」と思う人はそんな多くないと思います。多くの人は、「自分が亡くなった後、財産が原因で家族がもめないように」、「遺産分割で家族が手間取らないように」など家族のために自分の意思を残すことが遺言書を書く目的ではないでしょうか。

それでは、遺言書を残した方が良い事例をいくつか紹介します。この事例は代表的なものですので、実際に遺言書を残したいと思った時は、ご自身のケースに当てはめて考えてみる、または司法書士などに相談してみることをおすすめします。

①独身の人

独身で子どもがなく、親か兄弟姉妹が相続人になる場合です。

②子どもがいない

結婚しているが子どもがなく、配偶者、親、兄弟姉妹が相続人になる場合です。

③相続人がいない

独身で子どもがなく、親も兄弟姉妹もいない場合です。

④再婚している、または認知した子どもがいる

先妻、先夫の子ども、後妻、後夫の子どもがいる、または認知した子どもがいる場合です。

⑤相続人の廃除

財産を残したくない相続人がいる場合です。

相続人の廃除とは、被相続人(亡くなった人)が「相続人から虐待を受けていた」、「ひどい侮辱を受けていた」など非行があった場合、家庭裁判所に相続人廃除の申し立てをして非行があった相続人から相続権を奪うことができます。

■自筆証書遺言と公正証書遺言のメリットとデメリット

遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。それぞれメリットとデメリットがありますので解説していきます。

①自筆証書遺言のメリットとデメリット

【メリット】

証人が不要で、費用がかからない。紙とペン、印鑑があれば作成できるので、楽に遺言書が作れます。

【デメリット】

証人がいないので、遺言書を作成したこと自体分からず、残された家族から発見されないこともあります。また、偽造や改ざんされる可能性もありますし、相続額など遺言書に書いてある内容によっては、相続人同士のトラブルが発生することもあります。そして、家庭裁判所での検認が必要になります。

検認とは、遺言書の偽造や改ざんを防止するため、遺言書に書いてあることを確認するための手続きです。家庭裁判所で相続人か相続人の代理人が立会い、検認を受けると検認調書が作成されます。
なお、2020年7月10日から自筆証書遺言書を法務局で保管する自筆証書遺言書保管制度が始まりました。自筆証書遺言書保管制度を使えば、家庭裁判所の検認が必要なく、遺言書の改ざん、紛失を防ぐことができます。保管手数料は3,900円となります。

②公正証書遺言のメリットとデメリット

【メリット】

公正証書遺言は、遺言したい人が話した内容を2人以上の証人立会いのもと、公証役場の公証人が文書にする遺言書です。公証人と多数の証人が立ち会うわけですから、遺言書の内容や意思能力についてトラブルになることは少ないと思います。

【デメリット】

遺言書の内容を公証人や証人に知られてしまうことと、公正証書遺言の作成費用(相続財産の額により変わる)が発生していまいます。

公証人とは、弁護士、検察官、裁判官などの経験者などから法務大臣が任命した公務員です。

わかりやすいように、次の通り自筆証書遺言と公正証書遺言の比較表を紹介します。

自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 自分(自筆)で作成 公証人が作成
証人の有無 証人は不要 証人は2人以上
家庭裁判所の検認 検認は必要 ※自筆証書遺言書保管制度を使えば不要 検認は不要
改ざんや紛失 改ざんや紛失はあり得る 改ざんや紛失はない
費用 無料 ※法務局で保管する場合は手数料3,900円必要 相続財産の額により変わる
相続トラブル 相続額など遺言書に書いてある内容によっては、相続人同士のトラブルが発生することもある 遺言書の内容や意思能力についてトラブルになることは少ない

遺言書を作成する上で1つ注意した方が良いことは、遺言書は書面で残さなければいけません。例えば、ICレコーダーで録音した場合も本人の意思ですが遺言書としては無効です。

また、自筆証書遺言と公正証書遺言以外に、遺言したい人自身が遺言書を作成して封印をし、公証役場で証明してもらう秘密証書遺言もありますので参考にしてみてください。

■遺言できること、できないこと

自筆証書遺言と公正証書遺言について解説しましたが、遺言書では遺言できること、遺言できないことがあります。それでは具体的に解説していきます。

 

<遺言できること>

①相続に関すること

相続に関することは、相続人が財産を分ける時の配分(相続分)や遺産分割の方法の指定、相続人の廃除や廃除の取り消しなどです。

②身分に関すること

身分に関することは、未成年後見人や未成年後見監督人の指定、遺言執行者の指定などです。

・未成年後見人とは、親権者が死亡したなど未成年者の親権を行う人がいない場合に、未成年者の代理人になり未成年者の監護養育,財産管理,契約等の法律行為などを行う人です。

・未成年後見監督人とは、未成年後見人が監護養育,財産管理,契約等の法律行為などをしっかり実行しているかをチェックする役目の人です。

・遺言執行者とは、遺言書の内容にしたがって実行する人です。

③財産の処分に関すること

財産の処分に関することとは、遺贈や寄付、生命保険受取人の指定など財産をどのように処分するかということです。

遺贈とは、例えば「生前良く面倒を見てくれた長女にすべての遺産を遺贈する」など遺言によって特定に人に財産を引き継がせることです。
ただ、遺贈は相続トラブルになることもあります。この話は後ほど解説します。

■遺言書の内容が全部尊重されるわけではないので注意

先ほど遺贈の解説をしましたが、「生前良く面倒を見てくれた長女にすべての遺産を遺贈する」などと遺言書に書いてあった場合、相続トラブルが発生する可能性がありますし、残された長女以外の家族は相続できなくなり困ってしまいます。
このような問題が起きないように、相続人に最低限の財産を残さなければいけないと法律で定められています。これを遺留分制度と言います。遺留分が認められるのは、配偶者、直系卑属、直系尊属です。

・直系卑属とは、子・孫など自分より後の世代で、血のつながった直系のことです。また、養子も含まれます。兄弟・姉妹、甥・姪、子の配偶者は含まれません。

・直系尊属とは、父母・祖父母など自分より前の世代で、血のつながった直系の親族のことです。また、養父母も含まれます。叔父・叔母、配偶者の父母・祖父母は含まれません。

なお、遺留分の割合は次の表を参考にしてください。

法定相続人 配偶者 父母 遺留分の合計
配偶者のみ 2分の1 2分の1
子のみ 2分の1 2分の1
配偶者と子 4分の1 4分の1 2分の1
父母のみ 3分の1 3分の1
配偶者と父母 3分の1 6分の1 2分の1

※亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。

■まとめ

遺言書を書く必要があるのか、自筆証書遺言と公正証書遺言のメリットとデメリットなどについて解説してきました。遺言書を書いたことがない人が1人で作成することは大変かと思います。また、遺留分の割合も解説しましたが、いざ計算しようと思っても計算方法が複雑で計算ミスをすることも考えられます。時間と労力、自分が亡くなった後に相続トラブルなど発生させないためにも司法書士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

ご相談お待ちしております。ご相談ご希望の方は、電話やメールフォームなどからご連絡ください。

《参考文献》

・『いちばんわかりやすい相続・贈与の本』(成美堂出版)
・裁判所HP:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_12/index.html

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