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相続財産清算人とは?選任申立ての流れや費用、誰がなるのかを解説

次のような場面を想像してください。

【Case1】
1. AさんとBさんの間にはCさんという子供がいます。

2. Bさんは数年前に亡くなっており、先日、Aさんも自宅で亡くなりました。

CaseのAさんが亡くなった後に相続が開始されると、相続人であるCさんがAさんの遺産の管理を行います。

しかし、少子高齢化・未婚率の増加・核家族化が進む日本では、Aさんのような相続人が誰もいないという事態が散見されるようになりました。

それでは、相続人がいない場合、個人の遺した財産はどうなるのでしょうか。

結論から申し上げますと、相続人がいない場合は「相続財産清算人」が選任されます。

今回のコラムでは、この相続財産清算人について解説していきます。

相続財産清算人とは?どのように選ぶ?

相続財産清算人とは、ごく簡単に説明すると、故人(被相続人)の財産を相続人の代わりに管理して清算まで行う人です。

相続財産清算人は、故人(被相続人)の最後の住所地を担当(管轄)している家庭裁判所に対して、利害関係者(または検察官)が申し立てをすることによって選任します。

相続財産清算人は待っていても自動的に選任されることはなく、自分で申し立てを行ってはじめて選任されることに注意が必要です。

相続財産清算人を誰にするのかは裁判所が判断しますが、一般的には弁護士や司法書士といった専門家が相続財産清算人になるケースが多いです。

相続財産清算人が選ばれる条件として主なものは、法定相続人がいない場合、相続人全員が相続放棄をした場合、欠格・廃除で相続人がいない場合があります。

※欠格・廃除とは、簡単にご説明すると、相続人としての権利を剥奪された人のことです。
例えば自分が優先的に相続したいがために先順位の相続人を死亡させ、刑事罰が課された場合は、相続の際に欠格とされます。

相続財産清算人を選任する申し立てをするために必要な書類と費用

相続財産清算人を選任する申し立てをするために必要な書類

相続財産清算人を選任する申し立てを行うためには、基本的に次の書類が必要です。

①申立書

②故人(被相続人)の生まれた時から亡くなった時までのすべての戸籍謄本等

③故人の父母の生まれてから亡くなった時までのすべての戸籍謄本等

④故人の直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本等

⑤故人の住民票除票または戸籍附票

⑥財産を証する資料(不動産登記事項証明書、預貯金や有価証券の残高が分かる書類等)

⑦利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)や金銭消費貸借書の写し等)

なお、これら7つのほかにも、
⑧故人の子供(及びその代襲者)で亡くなっている人がいる場合、その子供(及びその代襲者)の生まれた時から亡くなった時までのすべての戸籍謄本
⑨故人の兄弟姉妹で亡くなっている人がいる場合、その兄弟姉妹の生まれた時から亡くなった時までのすべての戸籍謄本
⑩代襲者としての甥や姪で亡くなっている人がいる場合、その甥や姪が亡くなった旨の記載がある戸籍謄本が必要になる場合もあります。

①の申立書のイメージは次のとおりです。

(裁判所ホームページ(https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_15/index.html/)より抜粋)。

相続財産清算人選任の申し立てをするために必要な書類と費用

多くの方が気になるのは、相続財産清算人を選任する際の費用ではないでしょうか。

まず、市区町村役場で戸籍謄本等をもらう際にかかる費用は次の通りです。

①戸籍謄本450円(1通)
②除籍謄本750円(1通)
③改正原戸籍謄本750円(1通)

また、相続財産清算人を選任する申し立ての手続でかかる費用は次の通りです。

①収入印紙800円
②連絡用の郵便切手2,000円程度(家庭裁判所ごと必要な金額が変わるため、必ず管轄の裁判所に確認しましょう)
③官報公告費用5,075円

最後に、相続財産清算人の報酬です。

相続財産清算人の報酬は、弁護士や司法書士といった専門家に依頼する場合、月額1万円〜数万円が相場となっています。

なお、この報酬額は相続財産(故人が遺した財産)の額などによって変動します。

※相続財産の額によっては(金額が少ない場合等)、手続の最中に費用が不足するといった状態を事前に防止するために、予納金が求められることがあります。

予納金の額は裁判所が決めるため、画一的な基準はありませんが、金額の多い場合で100万円程度が要求されます。

予納金はあくまでも手続のために必要な金額を事前に預けておく制度であるため、手続終了後に余ったお金は返金されます。

相続財産清算人の役割

それでは、相続財産清算人は、具体的に何をすることができるのでしょうか。

相続財産清算人の職務は、故人の遺した財産を保存し、管理することと、それを処分することの2つに分かれます。

相続財産を保存したり管理する行為は、建物を修繕をする、不動産の相続登記をするといった、相続財産の現状を維持したままで財産を維持・利用することを指します。

この保存と管理といった行為は、家庭裁判所の許可は不要で、相続財産清算人自らの判断で行うことができます。

相続財産を処分する行為は、故人の遺した不動産の売却や、家具等の処分、株式といった金融資産の売却をすることを指します。

これらの行為は、相続財産清算人の独断では行うことができず、事前に家庭裁判所に対して権限外行為許可の申し立てを行い、許可を得た上で行う必要があります。

相続財産清算人がその職務中に行う主な行為は次の通りです。

①故人の遺した財産(相続財産)がどの程度あるのか調べる

②相続財産を管理する

③相続人がいるかどうかを調べる

④相続財産を清算する

⑤残った財産を国庫に引き継ぐ

相続財産清算人の選任を申し立てたけど却下された。どうして?

相続財産清算人の選任を申し立てたものの却下される場合があります。

主なものは次の通りです。

①戸籍謄本等から相続人の存在が明らかな場合

②管理するための相続財産がそもそもない場合

③申し立てる権利がなかった場合

④家庭裁判所から請求された予納金を支払わなかった場合

まず①は、戸籍謄本等の見間違いなどを原因として、後から相続人がいたことが分かったようなケースです。

相続財産清算人は故人に相続人がいる場合は選任できないため、申し立てを行なっても却下となります。

次に②です。そもそも論として、相続財産清算人は故人の遺産を管理するために選任します。
つまり、管理する財産がなければ相続財産清算人が行う業務がないため、選任の申し立てをすることはできません。

さらに③は、相続財産清算人選任の申し立てをしようとしたものの、申し立てる権利がなかったケースです。

上述したように、相続財産清算人選任の申し立ては利害関係者(または検察官)しかすることができません。

最後に④は予納金を支払わなかった場合です。

家庭裁判所から予納金の支払いを求められた場合にそれを拒むと、相続財産清算人の選任の申し立てが却下されます。必ず支払うようにしましょう。

おわりに

今回のコラムでは、相続財産清算人の選任申立ての流れや費用、誰がなるのかについて大まかに解説しました。

相続財産清算人を選任する申し立ての手続そのものにはあまり費用はかかりません。

しかし、相続財産清算人の報酬などを支払う必要があり、場合によっては高額になります。

選任の申し立てをするかどうかも含めて、慎重に検討しましょう。

迷った際は、司法書士や弁護士といった専門家にまずは相談してみてはいかがでしょうか。

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