数次相続とは?手続きや相続税申告・登記などの注意点も網羅的に解説

数次相続が発生したものの、どのように手続きを進めたら良いのか分からないという相続人の方は多いのではないでしょうか。数次相続が発生すると権利関係が複雑化しやすくなるため、円滑に手続きを進めるためにいくつかポイントを押さえることが大切です。
弊所では、名義人が亡くなった後に相続登記をしないまま数年・数十年が経過し、その後、母も亡くなったというご相談を受けることがあります。このようなケースでは、単に「現在の相続人で話し合えばよい」というわけではなく、最初の相続が発生した時点で誰が相続人だったのか、その後に相続人の一人が亡くなったことで誰がその地位を承継したのかを分けて整理する必要があります。数次相続は、相続人の人数が増えるだけでなく、遺産分割協議書に署名押印すべき人や、登記申請に必要な戸籍の範囲が複雑になりやすい点に注意が必要です。
本記事では、数次相続の定義や具体的な手続き、おすすめの相談先などについて、具体例を交えて解説します。
目次
数次相続とは?定義と他の用語との違い
数次相続が発生して二次相続の相続人となる場合は、そもそも数次相続の定義についてよく理解しておくことが重要です。
ここでは、数次相続の理解を深めるための一歩として、数次相続の意味について具体例を交えて解説します。
一次相続の遺産分割協議中に二次相続が開始すること
数次相続とは最初の相続(一次相続)の遺産分割協議の成立前に相続人の1人が死亡し、次の相続(二次相続)が開始された状況のことで、遺産分割協議に参加できる地位が次の相続人に引き継がれていきます。
このように、「数次相続」が発生すると、遺産分割協議中という短期間に2つ以上の相続が続くため、相続関係がより複雑化しやすくなるのが特徴です。
ちなみに、「最初の相続」を一次相続、「次の相続」を二次相続と呼び、遺産協議分割協議中に連続して相続人が死亡した場合は、一次相続、二次相続、三次相続、四次相続と続いていきます。
数次相続の2つの具体例
数次相続の定義を理解したところで、より具体的なイメージを持つために、具体例もあわせて見ていきましょう。
【ケース1】一次相続の相続人である長男が死亡した場合
父(被相続人)が死亡し、その一次相続の相続人である母(被相続人の妻)、長男、長女のうち、長男が死亡して二次相続が発生したというケースで考えてみましょう。長男とその妻との間に、2人の子どもがいます。
このケースでは、父の遺産分割協議は、母と長女、長男の妻(長男の相続人)、長男の子ども2人(長男の相続人)で行うことになります。
【ケース2】一次相続の相続人である配偶者が死亡した場合
続いては、父(被相続人)が死亡し、その一次相続の相続人である妻と子ども2人のうち、妻が死亡して二次相続が発生したケースです。
この場合、子ども2人は、一次相続の相続人であり、二次相続の相続人でもあります。そのため、子ども2人の法定相続分は、一次相続による1/4のほか、妻(母親)の法定相続分1/2に関しても、遺産分割協議を実施したうえで、相続人として分割することになります。
他の用語との違い
数次相続と似たような用語には、相次相続や再転相続、代襲相続があります。相次相続と他の用語との意味の違いについても理解しておきましょう。
| 数次相続 | 一次相続の遺産分割中に相続人が死亡した |
| 相次相続 | 一次相続から10年以内に、相続人が死亡した |
| 再転相続 | 一次相続の「熟慮期間※」経過前に相続人が死亡した |
| 代襲相続 | 一次相続の被相続人の死亡前に、相続人が死亡した |
※相続があったことを知ってから3ヶ月。相続放棄や限定承認できる期間のこと
4つの相続の違いは、相続人が死亡した時期にあります。
数次相続の手続き
数次相続では、一般的な相続手続きと異なる点があります。さまざまなトラブルを未然に回避するために、あらかじめ手続きの流れを押さえておくことが必要です。
ここでは、数次相続の手続きについて解説します。
1.相続人を確定
相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、数次相続においては、死亡した人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、すべての相続人を確定させなければなりません。
円滑に遺産分割協議を進めるため、相続の順序や相続分など法定相続の考え方についても理解しておきましょう。
前提として押さえておきたいのが、被相続人の「配偶者」は常に相続人であるということです。相続の順序は以下のとおりです。
<相続の順序>
・第一順位:被相続人の子ども(1親等)
・第二順位:被相続人の父、母(1親等)
・第三順位:被相続人の兄・弟・姉・妹(2親等)
被相続人の子どもが死亡している場合は孫(2親等)が相続人となり、子ども・孫が死亡している場合は曾孫(3親等)が相続人となります。
また、父母の両方が死亡している場合は、直系尊属の祖父母が相続人になります。兄弟姉妹が死亡している場合は、その配偶者との子どもである、おい・めい(3親等)が相続人となります。
法定相続分は以下のとおりです。
<相続分>
| 相続人 | 相続分 |
| 配偶者のみ | 相続財産のすべて |
| 配偶者と第一順位(子ども・または孫) | 財産×1/2を配偶者と第一順位の相続人※がそれぞれ相続※子どもが複数いる場合は、1/2を人数で分割 |
| 配偶者と第二順位(父・母) | 配偶者:財産×2/3第二順位※:財産×1/3※父母は1/3を分ける |
| 配偶者と第三順位(兄・弟・姉・妹) | 配偶者:財産×3/4第三順位の相続人※:財産×1/4※複数いる場合は、1/4を人数で分ける |
2.遺産分割協議
次に、遺産分割協議を行います。数次相続では、一次相続と二次相続の遺産分割協議を別々に行うことも、同時に行うこともできます。一次相続と二次相続の相続人が完全に重複しているケースなどでは、1回にまとめて行うほうが混乱を招きにくいでしょう。
一方、相続人が重複していない場合は分けて行った方が進めやすいケースもあります。
3.遺産分割協議書の作成
遺産分割協議書の作成は必須ではありませんが、書面に残しておくことで、相続人間におけるトラブルの防止につながります。また、不動産の所有権移転登記や相続税申告の際、添付書類として遺産分割協議書の提出が求められるため、こうした点からも作成しておくと良いでしょう。
遺産分割協議書を作成する際は、一次相続と二次相続を別々に作成することをおすすめします。別々に作成する場合、一次相続の遺産分割協議書では、「相続人情報の記載欄」と、遺産分割協議書の最後にある「相続人の署名欄」が一般的な遺産分割協議書と異なります。
<一次相続の遺産分割協議書を作成する際のポイント>
・相続人情報の記載欄:二次相続の被相続人の記載欄には、肩書を「相続人兼被相続人〇〇〇」と記載する
・相続人の署名欄:相続人としての地位が重複する場合、二次相続の相続人の署名欄には、肩書を「相続人兼〇〇〇の相続人」と記載する
4.相続税の申告
遺産分割協議書を作成したら、相続税を申告します。このとき、以下の注意点を押さえておくことが重要です。
・一次相続税の申告と納税義務は引き継がれる
・二次相続の相続人に限り申告期限を延長できる
・基礎控除額は増えない
・相次相続税控除を受けられる
・相続税額の軽減を図る特例がある
一つずつ解説します。
①一次相続税の申告と納税義務は引き継がれる
一次相続の相続税申告と納税義務は、二次相続の相続人に引き継がれることを押さえておきましょう。
例えば、一次相続の被相続人(Aさん)が死亡した後、二次相続の被相続人(Bさん)が死亡した場合、Aさん死亡における、Bさんの相続税申告・納税義務は、二次相続の相続人に引き継がれます。
②二次相続の相続人に限り申告期限を延長できる
相続税申告の期限は相続開始(被相続人の死亡を知った日の翌日)から10ヶ月です。しかし、提出義務者である一次相続の相続人が提出期限前に申告書を提出せず死亡した場合、
その相続人(二次相続の相続人)は、申告期限を「二次相続の発生(二次相続の被相続人の死亡を知った日)から10ヶ月」に延長できます。
<具体例>
父、母、長男、長女、長男の妻、長男に2人の子どもがいるケースで、父が死亡(平成29年7月17日)した後、長男が死亡(平成30年4月5日)
この場合、長男の妻と子ども2人が長男に代わって行う父の相続税の申告期限は、長男の相続税申告期限と同じ平成31年2月5日(長男の死亡日から10ヶ月後)に延長されます。なお、母と長女は、二次相続の相続人ではないため、相続税の申告期限は延長されません。
③基礎控除額は増えない
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出できます。
<相続税の基礎控除額>
3,000万円+600万円×法定相続人の数
計算式のとおり、法定相続人の数が増えると基礎控除額が増えることになりますが、数次相続の場合、基礎控除額は被相続人の相続が発生した時点での法定相続人の数で計算します。そのため、二次相続の発生により法定相続人が増えたとしても、相続税の基礎控除額は増えないという点に注意しましょう。
④相次相続税控除を受けられる
二次相続の相続税を申告すると、相次相続控除を受けられます。
相次相続控除とは、相次相続(一次相続から10年以内に相次いで相続が発生すること)の発生時に一定の要件を満たしていれば二次相続の相続人が受けられる税額控除のことです。同じ財産に相続税が二重に課税されることによる、相続税の納税負担軽減を図ることを目的としています。
⑤相続税額の軽減を図る特例がある
数次相続では、「配偶者の税額の軽減」「小規模宅地等の特例」といった制度が適用され、一次・二次相続における相続税の税額を軽減できる可能性があります。
<相続税額の軽減を図れる2つの制度概要>
・配偶者の税額の軽減:被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、1億6千万円か、配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからないという制度です。
・小規模宅地等の特例:相続などによって取得した財産のうち、相続開始直前において被相続人または被相続人と生計をひとつにしていた親族の、事業用や居住用の宅地などについて、一定の要件を満たせばその評価額が一定割合で減額される制度のことです。
ただし、これらの税額軽減制度を活用して税額負担の軽減を実現するためには、緻密な試算に基づいて遺産分割する必要があります。詳しくは、税務署や税理士等の専門家に相談しましょう。
※相続税の申告要否、税額計算、各種特例の適用可否については、個別事情により判断が異なります。当事務所では、司法書士へのご依頼とあわせて、必要に応じて弊所提携の税理士と連携しながら手続きを進めて参ります。
5.相続財産に不動産がある場合は相続登記をする
土地や建物など不動産を相続で取得した場合、その所有権の取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請手続きをします。数次相続の相続登記手続きは、原則、まず一次相続の登記手続きを行い、次に二次相続の登記手続きを行います。
相続登記に必要な書類は、遺産分割協議の場合と、法定相続分の相続の場合とでは異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、相続登記には土地の固定資産税評価額×0.4%の登録免許税が必要です。しかし、税負担により登記を避ける動きを防止するために、平成30年4月1日から土地の相続で一定の要件(租税特別措置法第84条の2の2第1項、租税特別措置法第84条の2の2第2項)を満たす場合に、相続登記の登録免許税の免税措置が取られています。なお、現時点では、この免税措置は令和9年3月31日までの適用となります。
数次相続で相談できる専門家
数次相続が発生すると、権利関係が複雑化しやすいため、専門家に相談することをおすすめします。
以下では、相談事項別の相談先を紹介します。
| 主な相談事項 | おすすめの相談先 |
| 相続人調査の他、不動産の名義変更も依頼したい | 司法書士 |
| 相続放棄について相談したい | 弁護士 ※書類作成のみなら、司法書士も可能 |
| 相続人調査や遺産分割協議・遺産分割協議書の作成で相続人間にトラブルが起きている | 弁護士 |
| 相続税申告について困っている | 税理士 |
よくある質問
ここまで、数次相続の概要と、具体的な手続きなどについて解説してきました。数次相続についてより理解を深めるために、よく聞かれる質問と回答を紹介します。
数次相続では中間省略登記は認められる?
中間省略登記とは、複数の権利移転があったときに中間の登記を省略し、当初の名義人からいきなり最後の名義人に登記を変更することです。例えば、不動産取引で、ある建物がA→B→Cと転売された場合、中間者Bの名義変更を飛ばし、AからCに移転登記させることをいいます。
不動産登記では、原則として中間省略登記は認められていませんが、数次相続の場合、「中間の相続人が1人」「結果的に単独相続になる場合」などでは、認められる可能性があります。
数次相続で相続放棄はできるの?
数次相続で一次相続のみ承認(相続)して、二次相続を放棄することはできません。二次相続を放棄した時点で、一次相続の相続権を失うためです。
例えば、祖父が死亡し、その後父親が死亡して、その相続人である子どもが父親と祖父の遺産を相続した場合で考えてみましょう。
この場合、父親の二次相続を放棄した時点で、祖父の一次相続の相続権を失っていることになるため、父親の二次相続を放棄して祖父の一次相続のみ承認することはできません。逆に、父親の二次相続のみを承認して祖父の一次相続を放棄することは可能です。
数次相続に関するまとめ
本記事では、数次相続が発生した場合を想定し、円滑に手続きを進められるように、定義や具体的な手続きなどについて、具体例を交えて解説しました。
数次相続とは、最初の相続の遺産分割協議の成立前に相続人の1人が死亡し、次の相続が開始された状況のことです。数次相続が発生すると、2つ以上の相続が続くため、相続関係がより複雑化しやすくなります。相続人間でのトラブルに発展しないよう、本記事で紹介した数次相続の概要や手続きの流れをあらかじめ理解した上で、専門家に相談して対応していくことをおすすめします。

