司法書士に頼めることとは?相続中心に他の専門家との違いもあわせて解説

不動産の名義変更や相続の手続き、会社設立、借金問題など、私たちの生活のなかで法律や登記に関わる場面は意外と多くあります。こうした場面で頼りになるのが「司法書士」です。しかし、司法書士にどこまで依頼できるのか、また弁護士や行政書士と何が違うのか、分かりづらいと感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、司法書士に依頼できる主な業務をわかりやすく解説します。 他の専門家との違いや、依頼する際のメリット・注意点についても解説しているので、依頼を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
目次
1 司法書士に頼めること・対応できる主な業務
司法書士は、登記業務や裁判所提出書類の作成、法律文書の作成など、法律に関するさまざまな事務処理を担う国家資格者です。
弁護士ほど広範な業務には対応していませんが、その分、特定分野においては高い専門性を発揮します。 依頼者の法的ニーズに的確に応える、身近な法律の専門家といえるでしょう。
ここでは、司法書士に依頼できる代表的な業務について、詳しく解説していきます。
(1)不動産登記の手続き
不動産登記は司法書士の代表的な業務の一つであり、この分野においては長年の実績と高い信頼性を持っています。不動産登記や商業登記など登記にはさまざまな種類がありますが、司法書士は基本的にそれらすべての登記手続きに対応可能です。
①所有権移転登記
所有権移転登記とは、不動産の名義(所有者)を変更するための登記手続きです。たとえば次のようなケースで必要になります。
・不動産を購入したとき(売買)
・親から土地や家を譲り受けたとき(贈与)
・親族が亡くなり不動産を相続したとき(相続)
この手続きは、不動産の所有者であることを公的に証明するために重要です。登記を行わないと、将来的に売却や譲渡ができなくなる恐れがあり、資産価値の低下にもつながります。
司法書士は、登記原因証明情報や登記識別情報(旧:権利証)、印鑑証明書、固定資産評価証明書など、必要な書類の準備から法務局への申請までを一括して対応します。 書類の不備が許されない手続きのため、専門家の力を借りることで安心して進めることができます。
②抵当権設定登記
住宅ローンを組む際、銀行などの金融機関は、万が一返済が滞った場合に備えて、購入する不動産に「抵当権(担保権)」を設定します。これにより、返済不能時には物件を競売にかけて債権を回収できるようになります。
抵当権設定登記は、融資の実行日に合わせて、正確かつ迅速に行わなければなりません。司法書士は、金融機関との連絡調整や必要書類の収集、法務局への申請手続きを一貫して担当します。
登記の遅れや誤りが重大なトラブルにつながる可能性があるため、多くの金融機関では司法書士を指定して登記手続きを依頼しています。
③住所変更登記
不動産の所有者が引っ越した場合には、登記簿上に記載された住所もあわせて変更する必要があります。この変更を怠ると、将来的に不動産売却や相続の場面で手続きが滞り、取引に支障が生じる可能性があります。
司法書士は、住民票などの必要書類を収集し、住所変更登記の申請をサポートできます。手続きを円滑に進めるとともに、将来的なトラブルの予防にも貢献します。
なお、法人の場合も、代表取締役の住所が変更された際には、会社の登記だけでなく、法人名義の不動産についても登記簿上の住所を更新する必要があります。
(2)会社や法人登記に関する業務
会社の設立から日常的な変更手続きに至るまで、法人登記は司法書士が担う重要な業務のひとつです。特に中小企業や個人事業主にとって、法務の専門家である司法書士は非常に頼りになる存在です。
①法人設立時の支援
会社を新たに設立するには、多くの書類作成や複雑な行政手続きが伴います。専門的な知識がなければ、円滑に進めることは困難です。
司法書士は、法人設立時に以下のような手続きをサポートします。
・定款の作成と公証人による認証
・資本金の払込証明の作成
・登記申請書類の作成および会社設立登記の代行
・登記完了後の印鑑証明取得
・銀行口座の開設サポート
司法書士に各種手続きを依頼することで、法人設立時における手間を大幅に削減できます。法人設立時から設立後まで一貫したサポートを受けられるのは、司法書士の大きな魅力です。
②役員変更や本店移転登記
取締役の就任・退任、代表取締役の交代などがあった場合は、2週間以内に法務局に登記を行う必要があります。これを怠ると過料(行政罰)が課されることもあります。
また、本社の所在地が変わった場合には「本店移転登記」が必要です。特に管轄法務局が変わるケースでは、移転前・移転後の両方の法務局への申請が求められるため、司法書士の専門的なサポートが重要になります。
なお、本店の移転により法務局の管轄が変わる場合、登記申請自体は移転前の管轄法務局に対してのみ行います。これにより、移転先の法務局に申請書類が送られて、自動的に受理される仕組みになっています。
③商業増資の手続き
企業が資本金を増やす際には「増資登記」が必要です。出資者の割り当て、登記内容の確認、証明書類の作成などには、法的知識と実務経験が求められます。資本金の額の計算や株主総会議事録等の作成、法務局への登記申請など、増資に関する手続きについて一貫したサポートを受けられます。
特に第三者割当増資など、出資者が株主以外の場合には、法的なトラブル防止のために司法書士の関与が重要です。
(3)相続や遺言に関する業務
相続に関する手続きでも、司法書士は幅広い支援を提供しています。法律に基づいた正確な手続きを通じて、円満な相続の実現をサポートします。
①相続登記の申請
2024年4月から相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に名義変更を行わなければ、10万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。特に複数人で相続する場合には、誰がどの不動産を取得するかを明確にして登記を行わなければなりません。
戸籍謄本の収集から相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、そして登記申請まで、司法書士が一貫してサポートします。
②遺産分割協議書や遺言書の作成支援
遺産分割協議書は、相続人全員の合意の下で誰が何を相続するかを明記する書類で、不動産登記や銀行口座解約の際に不可欠です。書式や記載内容に不備があると無効となる恐れがあるため、司法書士によるサポートが重要です。
また、生前に遺言書を作成したいというニーズにも対応できます。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。司法書士はそれらを丁寧に説明し、法的に有効な遺言書の作成を支援します。
遺言書を作成しておけば、相続開始後の無用な争いを防ぎやすくなります。「いい相続」を実現するためには、適切な生前対策は欠かせません。
③相続財産の管理
司法書士は、相続発生後の財産管理についても支援できます。具体的には、預貯金や株式等の承継手続き、相続人がいない場合の財産管理(相続財産清算人への就任)や、事業の承継手続きに関する支援にも対応しています。
相続人が遠方にいる場合でも、司法書士の関与によってスムーズな対応が期待できます。相続人同士の間でトラブルが懸念される場合や、相続税に関する不安がある場合でも、司法書士は弁護士や税理士と連携し、必要に応じて専門家の知見を活かしながら、円滑な相続手続きを支援する体制を整えています。
(4) 成年後見制度に関する業務
高齢化が進む中で、「認知症」や「判断能力の低下」により、財産管理や契約手続きが難しくなるケースが増えています。そうした状況で利用されるのが「成年後見制度」であり、司法書士は申立てや制度の活用支援において重要な役割を担っています。
①成年後見人の申立て
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方の代わりに、家庭裁判所から選任された後見人が財産管理や契約などの法律行為を行う制度です。
司法書士は家庭裁判所に提出する申立書類の作成から、必要な戸籍・診断書の収集、親族への説明・調整までをトータルでサポートします。後見制度には、以下の3つの類型があります
・後見(判断能力が欠けている場合)
・保佐(判断能力が著しく不十分な場合)
・補助(判断能力が不十分な場合)
それぞれの類型に応じて、どのような支援が必要かを司法書士が丁寧に説明し、適切なサポートを行います。
また、司法書士自身が家庭裁判所から後見人に選任され、財産の管理や契約手続きの代理を行うこともあります。専門家による透明性と適正な管理が期待できるため、親族間のトラブル回避にもつながります。
②財産管理契約や家族信託の提案
後見制度に代わる方法として、判断能力があるうちに将来に備えて契約を結んでおく「任意後見契約」「財産管理契約」「家族信託」などの手段もあります。
・財産管理契約:本人が元気なうちに、信頼できる人に銀行口座の管理や支払いなどを依頼する契約。
・任意後見契約:判断能力が低下したときに備えて、後見人になる人とあらかじめ契約を結んでおく制度。
・家族信託:家族に財産の管理・運用・処分を託すことで、柔軟な資産承継が可能になる新しい仕組み。
司法書士はこれらの契約について、法的リスクや家族構成を考慮したうえで最適な仕組みを提案し、契約書の作成、登記などの手続きをサポートします。これらの制度を活用することで、財産の承継先や将来のトラブルに関する不安を軽減でき、安心した生活を送ることが可能になります。
(5) 借金・債務整理や裁判関連の手続き
司法書士は借金問題に対する法的な支援も行っています。司法書士のうち「認定司法書士」は、簡易裁判所で扱う140万円以下の民事事件について、一定の範囲で代理権を持っています。
①過払い金請求や任意整理
過払い金とは、貸金業者に対して払い過ぎていた利息のことです。司法書士は利息制限法に基づいて再計算を行い、貸金業者に対して過払い金の返還請求を行うことができます。すでに完済しているものでも過払い金が発生している可能性があるので、時効にかかる前に過払い金が発生しているかをチェックしてもらうとよいでしょう。
任意整理とは、裁判所を介さずに債権者と直接交渉し、返済条件(利息のカット・分割払いなど)を見直す手続きです。司法書士は、債務者が無理なく借金を返済できるようサポートできます。
「月々の返済が追いつかない」「複数の業者から借りていて管理が難しい」と感じている場合は、早めに司法書士に相談することで悩みを解決できる場合があります。
依頼費用も弁護士に比べて抑えられることが多く、相談のハードルが比較的低いのも特徴です。
②自己破産のサポート
司法書士は「自己破産」の申立書類を作成し、裁判所へ提出する手続きのサポートも行っています。
自己破産とは、借金の返済が不可能であると裁判所が認めた場合に、借金の返済義務を免除してもらう制度です。税金などの一部の借金は免除されないものの、借金全額がゼロになることから、生活再建を目指す最終手段として利用されます。
自己破産は裁判所を通じて行うため、申立てに必要な書類も多く、煩雑な準備が求められます。生活状況の詳細な説明や家計収支の資料などが求められるため、専門家のサポートが不可欠です。
③訴状の作成や少額訴訟代理
司法書士は、簡易裁判所で扱われる訴額140万円以下の民事事件において、訴状の作成や代理人としての対応が可能です。
家賃の未払い、貸したお金の返済請求、商品の欠陥に対する損害賠償など、身近な金銭トラブルであっても、訴訟手続きは複雑で手間がかかることが多いです。司法書士に依頼すれば、訴状や答弁書などの必要書類を的確に作成してもらえるほか、簡易裁判所における代理人として、本人に代わって出廷・主張を行ってもらうこともできます。
特に少額訴訟制度を利用すれば、1日で判決が出ることもあり、迅速なトラブル解決が期待できます。
(6)家庭問題やその他の法的書類作成
司法書士は、家庭内の法的トラブルや日常生活に関わるさまざまな法的書類の作成も幅広く手がけています。
①離婚協議書や慰謝料請求の書類作成
離婚を進める際、「口約束」で済ませてしまうと、後々トラブルに発展するおそれがあります。離婚協議書には、主に以下のような内容を明記することができます。
・財産分与の内容
・慰謝料の有無と金額
・養育費の額と支払期間
・面会交流のルール
司法書士は、これらの取り決めを法的効力のある文書として整備し、公正証書化の手続きまでを支援します。これにより、将来の紛争を未然に防ぐことが可能です。
②養育費に関する手続き
離婚後の養育費については、合意内容を文書に残しておくことが非常に重要です。司法書士は、当事者間の取り決めをもとに「養育費に関する合意書」などを作成し、後のトラブルを予防する支援を行います。
また、養育費の支払いが滞った場合には、家庭裁判所への履行勧告申立書や、強制執行のための書類作成も依頼できます。さらに、子どもの成長に伴い養育費の増額が必要となった場合には、再協議書の作成も可能です。
養育費に関して法的な助言が必要な場合は弁護士への相談が適切ですが、書類作成や手続きの支援においては、司法書士が頼れる存在となります。
③クーリングオフの申請
悪質な訪問販売や押し売りなどに対しては、「クーリングオフ制度」を活用することで、一定期間内であれば契約を無条件で解除することが可能です。
ただし、制度の適用対象であるかどうかの判断や、通知書の作成・送付には専門的な知識が求められます。司法書士は、こうした消費者トラブルについての相談に応じるとともに、クーリングオフ通知書の作成を支援し、安心して契約解除ができるようサポートします。
2 司法書士に依頼するメリットと注意点
法律の専門家である司法書士へ依頼することには、多くのメリットがあります。ただし、どのような状況でも司法書士が最適な選択とは限らず、注意すべき点も存在します。ここでは、司法書士に依頼することで得られる主なメリットと、依頼時に注意すべきポイントを具体的に解説します。
(1)司法書士を利用するメリット
まずは、司法書士に依頼する主なメリットを見ていきましょう。
・専門性の高さと正確な手続きが期待できる
・比較的安価で済む場合が多く費用対効果が良い
・スムーズで安心な対応が期待できる
①専門性の高さと正確な手続きが期待できる
司法書士は、不動産登記・会社登記・相続手続きなど、法律に関わる手続きを専門とする国家資格者です。とくに、誤りが許されない法的手続きにおいては、正確性と慎重な対応が求められます。
たとえば、相続登記の際に氏名の漢字を一字でも誤ると、法務局から差し戻しを受け、再提出が必要になるケースがあります。司法書士は、戸籍の精査や法令確認を丁寧に行い、ミスのない書類を作成してくれます。
また、法務局や裁判所とのやり取りも代行してくれるため、依頼者は手続きに伴う煩雑な対応から解放され、安心して任せられます。
②比較的安価で済む場合が多く費用対効果が良い
司法書士の報酬は、弁護士や税理士などの他士業と比較すると安価であることが多く、特に登記手続きにおいては費用対効果が高い点が特徴です。
たとえば、不動産の名義変更や相続登記では、弁護士よりも数万円安く依頼できる場合があり、「手間をかけずに確実な結果が得られる」という観点から、費用に見合った満足度が得られます。
③スムーズで安心な対応が期待できる
司法書士に依頼する最大の利点のひとつは、「何をどう進めればよいのか分からない」といった不安を解消できることです。法律手続きは専門用語や細かなルールが多く、個人で対応するには負担が大きくなりがちです。
司法書士は、手続きの流れを整理し、必要書類の収集から申請までを一括でサポートします。疑問や不安を丁寧に解消してくれるため、安心して進められるのが大きな魅力です。
(2)司法書士に依頼する際の注意点
一方で、司法書士に依頼する際には、いくつかの重要な注意点があります。トラブルを避けるためにも、事前の確認と理解が必要です。司法書士に依頼する際の主な注意点は、以下のとおりです。
・対応可能な業務範囲の確認が必要
・報酬や費用の確認が必要
・必要書類や事前準備
①対応可能な業務範囲の確認が必要
司法書士は、登記、供託、裁判所提出書類の作成、簡易裁判所での一部代理など、特定の業務に限って対応が認められています。一方で、民事訴訟全般の代理や、交渉を伴う法律相談には対応できません。
たとえば、紛争が複雑化した場合や、法的交渉や調停、訴訟が必要となる場面では、司法書士では対応が難しく、弁護士の関与が必要になることもあります。
依頼内容が司法書士の業務範囲に含まれるかを事前に確認し、不明な点は必ず事前に相談しましょう。
②報酬や費用の確認が必要
司法書士報酬は自由化されており、同一の業務でも事務所によって料金が異なる場合があります。料金体系には「固定報酬制」「時間制」「成功報酬制」などがあり、あらかじめ確認しておくことが重要です。
また、登記には「登録免許税」、裁判所関連には「印紙代」「郵券代」などの実費が別途かかります。見積書をもとに、総額でどの程度の費用が発生するのかを事前に把握しておくようにしましょう。
③必要書類や事前準備
司法書士に依頼する場合でも、本人が用意すべき書類や情報が必要になることがあります。たとえば、相続登記を依頼する際に求められる主な書類には以下のようなものがあります。
・被相続人の出生から死亡までの戸籍
・相続人全員の戸籍
・固定資産評価証明書
・不動産の登記簿謄本
これらの書類を司法書士が代行取得してくれる場合もありますが、戸籍の請求にあたっては本人確認書類や家族間の協力が求められることもあるため、完全な「丸投げ」はできません。
必要な準備に協力することで、手続きがスムーズに進み、結果的に時間と費用の節約にもつながります。
3 司法書士と他の専門家の主な違い
司法書士は、登記手続きや裁判所に提出する書類の作成を主な業務とする法律の専門家ですが、世の中には他にも弁護士や行政書士など、法律関連の国家資格者がいます。
ここでは、司法書士とよく混同されがちな他の士業と比較しながら、それぞれの業務範囲や役割の違いについて解説します。
違いを正しく理解しておくことで、自分の状況に合った専門家に相談できるようになります。
(1)司法書士と弁護士の違い
弁護士は、法律に関するあらゆる業務を取り扱える“法律業務の総合職”ともいえる存在です。一方で、街の法律家とも呼ばれる司法書士の業務は、登記や一部の裁判業務に限定されています。
項目 | 司法書士 | 弁護士 |
主な業務内容 | 不動産登記、商業登記、相続手続き、成年後見制度の手続き、簡易裁判所における代理業務など。 | 民事・刑事事件の訴訟代理、法律相談、契約書の作成・チェック、交渉、行政手続きの代理など、法律に関する業務全般。 |
裁判所での代理権 | 簡易裁判所での訴額140万円以下の民事事件に限り、認定司法書士が代理可能。 | 全ての裁判所での代理が可能。民事・刑事を問わず、訴訟代理人として活動できる。 |
法律相談の範囲 | 業務に関連する範囲での法律相談が可能。 | 法律全般に関する相談が可能。 |
登記業務 | 不動産登記や商業登記の専門家として、登記申請書類の作成や手続きを代行。 | 登記業務は司法書士に任せることも多いが、必要に応じて対応することもある。 |
債務整理 | 任意整理や過払い金請求など、一部の債務整理業務に対応可能。 | 任意整理、個人再生、自己破産など、全ての債務整理業務に対応可能。 |
費用 | 業務内容によるが、比較的リーズナブルな費用で対応可能な場合が多い。 | 業務の複雑さや内容により変わる。司法書士より高くなる傾向がある。 |
主な相談内容の例 | 不動産の名義変更、会社設立、相続登記、遺言書の作成支援、簡易裁判所での少額訴訟代理など。 | 離婚、相続争い、交通事故、労働問題、刑事事件、契約トラブルなど、幅広い法律問題。 |
登記に関する悩みや紛争性のない相続トラブルであれば、比較的費用の安い司法書士に相談するのがよいでしょう。一方で、相続人間でのトラブルや裁判対応を望んでいる場合には、法律問題全般に対応できる弁護士の出番です。
この表を参考に、相談内容や手続きの内容に応じて、司法書士と弁護士を適切に選択することが重要です。
(2)司法書士と行政書士の違い
司法書士と行政書士は、どちらも「〇〇書類の作成を支援する専門家」として混同されがちですが、対応できる書類の種類や主な業務分野に違いがあります。
項目 | 司法書士 | 行政書士 |
主な業務内容 | 不動産登記、商業登記、相続手続き、成年後見、債務整理、簡易裁判所での訴訟代理など。 | 官公署に提出する書類の作成・提出代行、許認可申請、契約書や遺言書の作成(紛争性のないものに限る)など。 |
裁判所での代理権 | 認定司法書士であれば、簡易裁判所での訴額140万円以下の事件に限り代理可能。 | 裁判所での代理権はなし。 |
法律相談の範囲 | 登記や債務整理など、業務に関連する範囲で法律相談が可能。 | 許認可申請や契約書作成など、業務に関連する範囲で法律相談が可能。 |
登記業務 | 不動産や会社の登記に関する手続きの専門家。登記申請の代理・代行が可能。 | 登記業務には対応できない。 |
債務整理 | 任意整理や過払い金請求など一部の債務整理手続きに対応可能(簡裁代理認定が必要)。 | 債務整理業務には対応できない。 |
費用 | 弁護士より安価なケースもあり、業務内容によりリーズナブルに依頼可能。 | 比較的リーズナブルな費用で依頼できることが多い。 |
主な相談内容の例 | 相続登記、会社設立、不動産の名義変更、遺言書作成、簡易裁判所での訴訟手続きなど。 | 建設業許可申請、風俗営業許可、契約書作成、遺言書作成、内容証明郵便の作成など。 |
司法書士は主に登記業務に強く、行政書士は官公署に提出する書類作成に強みがあります。必要な手続きや相談内容に応じて、司法書士と行政書士のどちらに依頼するか判断するとよいでしょう。
4 まとめ
司法書士は、不動産登記や会社登記、相続手続き、債務整理など、私たちの暮らしに密接に関わる多くの法律的手続きを担う専門家です。特に相続や遺言、不動産の名義変更といった家庭内で起こる法的問題において、その正確な処理と迅速な対応は非常に頼もしい存在といえます。
また、簡易裁判所における一定額(140万円以下)の民事事件であれば、認定司法書士が代理人として交渉や訴訟、和解手続きなどを行うことも可能です。この点では、弁護士とは異なる「身近な法律の専門家」として、頼りになる存在だといえるでしょう。
一方で、司法書士が対応できる業務には限りがあります。依頼する内容に応じて、どの専門家が適しているかを見極めることが重要です。
日常の中で起こるさまざまな法律的手続きやトラブルに対して、司法書士は私たちの良きパートナーになり得ます。正しい知識と理解をもって、安心して相談・依頼できる環境を整えることが、トラブルを未然に防ぐ第一歩となるでしょう。
相続やその他のことでお悩みの際は、SAKURA司法書士法人までお気軽にご相談ください。私たちは皆さまの安心と円滑な手続きのため、全力でサポートいたします。