特別寄与料とは?受け取る要件や請求方法・条件、期限をまとめて解説
2018(平成30)年の法改正によって、「特別寄与(料)」という制度が導入されました。
この特別寄与という制度は聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。
今回のコラムでは具体例を挙げなから、比較的新しいこの制度について解説していきます。
目次
特別寄与料とは?
はじめに、次のようなCaseを考えてみましょう。
Aには、B・C・Dという3人の子供がいて、BにはXという妻がいました。Aは生前、練馬区の自宅でB・X夫婦と同居しており、長期間にわたってXがAの介護を行い、デイサービス等の利用料金も負担していました。他方で実の子供であるC・DはAの介護に協力しないだけでなく、デイサービスなどで必要なお金も一切負担しませんでした。そのような中で、Aは亡くなりました。
このような場合、実の子であるC・DはAの相続人であるため、遺産としてAの財産を手にいれることができます。
しかし、相続人でないXは、遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)に参加することができないだけでなく、寄与分(相続人の中で、故人の介護など、特別な貢献をした人が多く遺産をもらえる制度)もありません。
これではXのような人が可哀想で不公平ではないか?という疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。
そこでこのような不公平を無くすために、2018(平成30)年に法律が変わりました。
今回導入された「特別寄与(料)」という制度は、Xのような相続人ではない人が、自分の貢献に見合った分のお金を相続人に対して請求することができる制度です。
特別寄与料を受け取れる人はどのような人?
それでは、特別寄与料を受け取ることができるのはどのような人でしょうか?
特別寄与料を受け取ることができるのは、被相続人の親族のみです。
ここでいう親族とは、6親等内の血族や配偶者、3親等の姻族を指します。
なお、この制度は相続人以外で故人の介護などに貢献した人を保護するための制度なので、本来の相続人は特別寄与料を受け取ることはできません。
それに加えて、相続放棄をした人や、相続欠格事由がある人(相続権を失った人)、親族ではない内縁の妻なども、この制度の対象外です。
特別寄与料を請求できる条件と計算方法
Ⅰ 請求できる条件
特別寄与料を請求することができるのは、①「無償」で亡くなった人に対して療養看護などをした人と、②亡くなった人のお金や不動産といった財産の維持・増加に特別の寄与(貢献)をした人です。
この2つの条件について具体的にみていきましょう。
まず、特別寄与が認められるためには、療養看護といった亡くなった人に対する貢献が、「無償」で行われることが必要です(条件①)。
「無償」かどうかは、亡くなった人から貢献にふさわしいお金などを受け取っていたかで判断されます。つまり、療養看護をした時に、ほんの少しのお金をもらっていても、「無償」と判断されることもあり得ます。
また、特別寄与は、亡くなった人のお金や不動産といった財産を維持することや増やすことに貢献していた場合にのみ請求することができます(条件②)
Ⅱ 特別寄与料の計算方法
特別寄与料の計算は、具体的に決められた基準がないため、相続人と特別寄与を行なった人が話し合いで決めます。
具体的な基準がないと言っても、何も目安がないと特別寄与料を計算することができないため、特別寄与を行なった人が何をしたか?に応じて、一定の目安があります。
(1)亡くなった人の療養看護をしていた場合
亡くなった人の療養看護をしていた場合は、外部の業者に頼んだ際はどれくらいのお金がかかるか?を基準として計算します。具体的には次のとおりです。
なおここでいう裁量割合とは、①専門家ではない②親族が、療養看護を行なったことを考慮して0.5〜0.9の割合をかけるものです。
(2)亡くなった人の事業を手伝っていた場合など
亡くなった人の事業を無償で長期間にわたって手伝っていた親族も、特別寄与者になることがあります。そのような場合は、無償で手伝っていた時間に働いていた場合はいくらの収入があったのか?を基準として計算します。具体的には次のとおりです。
通常得ることができた給与額とは、厚生労働省が集計している賃金についての統計資料(賃金構造統計調査:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou_a.html)を基準にすることが多いと言われています。
また、生活費控除割合とは、(事業の手伝いによる報酬−生活費の負担額)を指します。
特別寄与料の請求方法と期限
最後に、特別寄与料の請求方法と期限について解説していきます。
Ⅰ 特別寄与料の請求方法
特別寄与料の請求方法は大きく分けて2つあります。
まず1つ目は、相続人への請求です。
自分が亡くなった人に対して特別寄与があった場合、相続人に相談しましょう。
相続人と特別寄与者の間で金額の合意をすることができれば、相続人に特別寄与料を払ってもらうことができます。これが一番理想的で平和な請求方法と言えます。
次に、相続人への請求がうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に対して、特別寄与料が請求できるかどうかや具体的な寄与料の金額について判断してもらうための申立てを行うこともできます。
家庭裁判所に申立てするには、①特別寄与者が、相続人の住んでいた場所を管轄する家庭裁判所に、③申立ての費用(収入印紙代1200円等)を支払い、必要書類(家庭調停申立書、申立人と相手方の戸籍謄本、亡くなった人が死亡したことがわかる戸籍謄本)を提出します。
Ⅱ 申立ての期限
家庭裁判所に特別寄与料についての申立てをするには、「申立ての期限」に注意しなければいけません。
具体的には、①相続開始と相続人を知ったときから6ヶ月、②相続開始から1年以内という期限を過ぎた場合、家庭裁判所に申立てをすることができなくなります。
なお、相続人に相談して特別寄与料を請求する場合にはこのような期限は設定されていないため、いつでも請求することができます。
おわりに
今回のコラムでは、2018(平成30)年の法改正によって導入された、「特別寄与」制度について解説してきました。
特別寄与料を相続人に対して請求する場合、揉めるケースも多々あります。
相続人に対して特別寄与料の請求をしやすくするために、自分が亡くなった人に対して行なった貢献の記録や、それを証明できる書類を用意しておくことが大切になるでしょう。
また、特別寄与料には相続税がかかることも必ず覚えておきたいですね。