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アパートやマンションの借主だった夫や父が死亡した場合の相続手続き

亡くなった夫がアパート、マンションの賃借人(借主)となっていた場合、同居していた家族はすぐに出ていかなければならないのでしょうか。
仮に出ていく必要があるのであれば、相続という偶然の事情により一家は住居を失うことになります。

この点、アパートやマンションの賃借人が死亡した場合でも、賃貸借契約は終了せず、相続の対象となります。
したがって、今後も継続してアパートやマンションを借りたいのか、それとも解約して退去するのか、相続人で決めて、それぞれ必要な手続を踏む必要があります。

本コラムでは賃借人が亡くなった場合の必要手続などを現役司法書士が詳しく解説していきます。

賃借人が亡くなった場合の原則・賃借権も相続対象

賃借人が亡くなった場合、賃借権は相続の対象となります。法律上、「被相続人(亡くなった人のことです)の一身に専属した権利以外は相続の対象となるとされています。
一身に専属した権利とは、生活保護の受給など、「その人だから特別に」持っていた権利のことです。

賃借権はこの一身に専属した権利に該当しないため、通常通り相続財産となります。

例外・終身賃貸借契約の場合

終身賃貸借契約とは、60歳以上の高齢者に対して、賃借人の終身にわたって住居を賃貸する一方、賃借人の死亡時に賃貸借契約を終了させる内容となっている建物賃貸借契約です。

高齢者に対して住居を貸しやすくすることで、高齢者の居住の安定が確保されるように工夫した契約形態となります。

賃借人の死亡によって契約が終了するため、賃借権は相続の対象となりません。
該当する可能性のある方は賃貸借契約書を確認したり管理会社に、問い合わせるなどして念のため確認しておくことをおすすめします。

相続人が賃借物件に住み続ける場合の手続き

(1)遺産分割協議で賃借権を相続する(新たに借主になる)人を決定する

遺産分割協議とは、相続財産を誰が何を相続するか話し合いをすることをいいます。

賃借権も相続財産のため、誰が賃借権を相続するか決める必要があります。

誰が相続するかについては、あくまで相続人同士で決めることであり、家主や管理会社の承諾は基本的に不要です。

なお、遺言書がある場合は遺言書の内容によって賃借権の相続人が決まりますし、相続人が一人の場合も遺産分割協議は不要です。

(2)賃借権の相続人を家主や管理会社に通知

遺産分割協議や遺言により賃借権の相続人が決まったら、家主や管理会社に通知をしましょう。

これ以降、賃借権を相続した相続人が賃貸物件に住むことができ、家賃も負担することになります。
なお、遺産分割協議に時間がかかってしまって、相続発生から遺産分割協議までに家賃が発生していた場合、その家賃は相続人全員の連帯債務となります。

したがって、家主は相続人全員に対して家賃全額の支払いを請求することができます。
仮に相続人のうち一人が家賃全額の支払いを行った場合、他の相続人に対してそれぞれの負担割合(法定相続分)の範囲で求償することはできます。

   相続によって賃借権が相続された場合、従前の契約内容が相続人へそのまま引き継ぎとなるため、改めて賃貸借契約の締結は不要ですが、後々のトラブル防止のためにも家主と相続人の間で賃借権の承継に関する事項をまとめた覚書を取り交わしておくのが妥当といえます。

相続人が賃貸物件に住まない場合の手続き

相続人が賃貸物件には住んでいない、もしくは相続開始後は住まないといった場合には、解約手続をしないと賃貸借契約は効力が持続するため、家賃が発生してしまいます。

相続人が誰も住み続ける意思がない場合には、速やかに解約手続を行いましょう。

一般的な賃貸借契約であれば契約期間や「1か月前の申し出により契約期間中でも解約可能」といった条項がありますので、賃貸借契約書の内容に従って解約手続を行いましょう。
不明な方は管理会社に問い合わせるなどして確認しましょう。

相続放棄をする場合

相続開始を知った後3ヶ月以内であれば、家庭裁判所に申し立てることによって相続放棄をすることができます。
相続放棄をすると。最初から相続人ではなかったことになるので、賃借権も相続することができません。

結果として家賃を負担したり賃貸借契約を解約する義務はなくなります。
しかし、相続開始まで賃貸物件に居住していた場合は、他の相続人が賃貸物件を管理することができるようになるまで、賃貸物件を適切に管理する必要があります。

敷金の取り扱い

賃借権を相続する場合、敷金返還請求権も引き継がれます。
敷金返還請求権については、相続人間で当然に分割承継されるとするのが裁判所の考え方であるため、各相続人はそれぞれ相続分に応じた敷金の返還を請求することができます。

しかし、各相続人から敷金の返還を請求することは、賃貸人・賃借人それぞれにとって面倒となることが多いと思います。

そこで、遺産分割協議の結果、賃借権を相続することとなった相続人から一括して敷金の返還請求をするなど賃貸人と賃借人の間で合意し、覚書に組み込んでおくことをおすすめします。

終わりに

アパートやマンションを借りていた夫が亡くなった場合、相続人が引き続き賃貸物件に住み続けるかどうかによってその後の必要手続が異なります。

また、賃料や敷金の処理方法、賃貸借契約書の確認、覚書など、法律の知識が必要となる場面も多くあります。

賃借権について相続が発生したがどうしてよいかわからない、といった方は是非一度ご相談ください。

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