【親が亡くなった時の年金の受給】遺族基礎年金と遺族厚生年金の受取り条件や手続について解説
「遺族年金」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなった時に支給される年金が遺族年金ですが、その種類は2つあり、受給要件などがそれぞれ異なることを知らない方は一定数いらっしゃいます。
今回のコラムでは、このような遺族年金の種類や受取条件、手続について解説していきます。
目次
遺族年金の種類
遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなった場合、亡くなった方によって生計を維持されていた遺族(例えば、亡くなった方と同居していて、子供のいる妻など)が受けることができる年金です。
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、亡くなった方の年金の加入、納付状況等によって、いずれか一方または両方の年金が支給されます。
遺族年金は、日本在住で20歳以上60歳未満の国民全員が加入する必要があります。
これに対して、遺族厚生年金は会社員や公務員が追加的に加入するものです。
2階: | 遺族厚生年金 |
---|---|
1階: | 遺族基礎年金 |
このような2段階の公的年金の仕組みは、一般的に「2階建て」の制度と呼ばれています。
遺族基礎年金の受給要件・対象者・年金額
次に、遺族基礎年金を受け取るために必要なそれぞれの要件等について詳しく見ていきましょう。
Ⅰ 遺族基礎年金の受給要件
遺族基礎年金は、次の4つのいずれかの要件を満たしている方が亡くなったときに、遺族に対して遺族基礎年金が支給されます。
① 国民年金に加入している(被保険者である)間に死亡したとき
② 国民年金に加入していた(被保険者であった)60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所があった方が死亡したとき
③ 老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき
④ 老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
1と2の要件は、死亡日の前日に、保険料の納付済みの期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未払いがなければよいことになっています。
また、3と4の要件については、保険料の納付済みの期間、保険料免除期間および合算対象期間を合わせた期間が25年以上ある方に限られます。
ここでいう合算対象期間とは、老齢基礎年金などの受給資格を計算する場合に、期間の計算には含めるものの、年金額には反映されない期間を指します。
例えば、1986(昭和61)年3月以前に、国民年金に任意加入できる人が任意加入しなかった期間等があります。詳細は日本年金機構ホームページ等でご確認ください。
Ⅱ 遺族基礎年金の受給対象者
遺族基礎年金の受給対象となるのは、亡くなった方に生計を維持されていた、次の遺族です。
①子供のいる配偶者
②子供
子供とは、18歳になった年度の3月31日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方を指します。
なお、子供のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子供に生計を同じくする父または母がいる間は、子供には遺族基礎年金は支給されないことに注意が必要です。
また、「生計を維持されていた」に該当するためには、以下の2つの要件をクリアする必要があります。
① 生計を同じくしていること(同居している、あるいは別居していても仕送りをしていたり、健康保険の扶養親族である等)
② 収入要件を満たしていること(前年の収入が850万円未満であること、または所得が655万5千円未満であること)
Ⅲ 遺族基礎年金の年金額
遺族基礎年金の年金額は機械的に算定することが可能です。
まず、子供のいる配偶者が受け取る場合は次の通りです。
68歳以上(昭和31年4月1日)以前生まれの場合 792,600円+子供の加算額
次に、子供が受け取る場合は、以下の金額を子の数で割った額が、1人あたりの金額となります。
※1人目および2人目の子供の加算額 各228,700円
3人目以降の子供の加算額 各76,200円
遺族厚生年金の受給要件・対象者・年金額
それでは、遺族厚生年金についてもそれぞれの要件等を見ていきましょう。
Ⅰ 遺族厚生年金の受給要件
遺族厚生年金は、次の5つの条件のいずれかに該当している方が死亡した場合に、遺族にたいして支払われます。
① 厚生年金保険に加入している(被保険者である)間に死亡したとき
② 厚生年金保険に加入している(被保険者である)期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
③ 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている方が死亡したとき
④ 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
⑤ 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
1と2の要件は、死亡日の前日に、保険料の納付済みの期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。
ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未払いがなければよいことになっています。
また、4と5の要件については、保険料の納付済みの期間、保険料免除期間および合算対象期間を合わせた期間が25年以上ある方に限られます。
Ⅱ 遺族厚生年金の受給対象者
遺族厚生年金は、亡くなった方に生計を維持されていた次の遺族のうち、最も優先順位の高い人が受け取ることができます。
優先順位第1位 | 子供のいる配偶者、子供 |
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優先順位第3位 | 子供のいない配偶者 |
優先順位第4位 | 父母 |
優先順位第5位 | 孫 |
優先順位第6位 | 祖父母 |
なお、子供や孫の年齢、収入といった要件は、遺族基礎年金と同様です。
Ⅲ 遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の年金額を求める方法は、遺族基礎年金と比べると煩雑でかなり難しいです。
遺族厚生年金の金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。
報酬比例部分は、次のAとBの足し算で求めることができます。
+
B:平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入期間の月数
遺族厚生年金の金額を個人で計算するのは難しいため、正確な金額を知りたい方は年金事務所に問い合わせるようにしましょう。
四 遺族年金を請求するための手続
最後に、遺族年金を請求するための手続について解説していきます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金ともに、年金を請求するときの手続はほとんど同じです。
まず、日本年金機構のホームページから「年金請求書」をダウンロードし、必要事項を記載します。年金請求書は年金事務所や街角の年金相談センター窓口でも手に入れることができます。
年金請求書のイメージ(日本年金機構のホームページ:
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/todokesho/izoku/20180305.htmlより抜粋)
次に、添付書類等を用意します。必要な添付書類は、読者のみなさまの状況に応じて異なります。詳細は日本年金機構のホームページ(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/izoku/seikyu/index.html)でご確認ください。
必要な書類が全てそろったら、住所地の市区町村役場の窓口に提出すれば手続は完了です。
ただし、死亡日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、お近くの年金事務所か、街角の年金相談センターが提出先になるため注意しましょう。
おわりに
今回のコラムでは、遺族基礎年金や遺族厚生年金の受取り条件や手続について解説しました。
遺族基礎年金と遺族厚生年金を見比べてみると、両者は非常によく似た要件、手続になっています。そのため、相違点を覚えておくと良いでしょう。
特に遺族厚生年金の年金額の計算は独特なため、困った場合は司法書士や税理士といった専門家に相談するのがおすすめです。
遺族年金の年金請求書の記入方法は、厚生労働省のYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?embeds_referring_euri=https%3A%2F%2Fwww.nenkin.go.jp%2F&source_ve_path=MCwzNjg0MiwyODY2NCwxNjQ1MDM&feature=emb_share&v=_DMwjEZBzwc)で解説されています。1度動画を観てから書いてみると良いかもしれませんね。