親の形見である宝石や腕時計は相続財産になる?現役司法書士がわかりやすく徹底解説。
親が亡くなり、形見である宝石や腕時計がある場合に、それも遺産分割協議の対象となるのでしょうか。
また、遺産分割協議の対象になるとしても、その価値をどう評価するのでしょうか。
親の形見であれば大切に持っていたいですし、取り扱いについて相続人同士で揉めたくないですよね。
本コラムではこうした疑問について、詳しく解説していきます。
目次
そもそも宝石や腕時計は法律上どのような分類となるのか。
宝石や腕時計などは、法律上「動産」として扱われます。
動産とは、不動産以外の物をいいます(民法86条)。
したがって、動産に該当するものは無数にあります。
ただ、遺産分割協議の場面で問題となるのは、親の形見である宝石や腕時計、絵画が一般的です。
動産も遺産分割協議の対象となるのか。
結論から言うと、動産も遺産分割協議の対象となります。
相続の対象について、民法では「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」と規定しています(民法896条)。
「一切の権利義務」なので、預貯金や不動産だけではなく、宝石や腕時計、絵画などの動産も当然、相続の対象となります。
また、上記のような目に見える遺産だけではなく、目に見えない遺産も承継します。
例えば、親が第三者に持っていた貸金債権などの権利や賃貸人の地位なども承継します。
さらに、義務も承継する旨規定されているので、被相続人のプラスの財産だけではなく、借金などの債務(マイナスの財産)も承継することになります。
なお、例外的に相続の対象とならない「一身に専属したもの」とは、「その人だから」持っていた権利のことです。
例えば、下記のようなものです。
①生活保護の受給権
②公営住宅の使用権
③雇用契約上の雇用者や被用者の地位
④身元保証債務や包括的な信用保証債務(通常の保証債務であれば相続します)
これらは、権利を持っていた本人でないと意味がないものとなります。
したがって、相続の対象からは外れます。
動産に相続税はかかる?
既に説明したとおり、動産は無数にあるため、宝石や腕時計などの高価なものから、古本、洋服などの財産的価値が低いものまで様々です。
これら動産は全て相続税がかかるのでしょうか。
国税庁では、「相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などの他貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるものすべて」と規定されています。
つまり、動産でも故人の手紙や写真などの換金性がないもの以外は全て相続税がかかることになります。
では、各種動産はどのように評価すればよいのでしょうか。
相続税がかからない場合も、遺産分割協議の前提として財産の評価額が判明している必要があるでしょう。
ここでは親の形見として宝石があった場合の、その宝石の評価方法について説明します。
(1)高額な宝石か、少額の宝石か
宝石は一般的に単価5万円以上のものは個別に相続税に計上し、5万円未満の宝石は「宝石一式」としてまとめて計上します。
宝石の評価方法は以下の通りです。
(2)宝石の評価方法①宝石鑑定士の鑑定
宝石鑑定の専門家である宝石鑑定士に宝石を鑑定してもらう方法です。
一番確実な方法ですが、鑑定料が発生します。費用をかけてもきちんと評価したい方におすすめです。
(3)宝石の評価方法②購入した宝石店への問合せ
宝石を売っている店舗は宝石の買い取りも行っていることがあるため、購入した店舗に問い合わせることで価値がわかることもあります。
ただし、下取り価格を提示された場合に注意が必要です。
宝石の取引価格と、下取り価格は異なりますので、適切に相続税の申告を行ったり、遺産分割協議を行ったりできない可能性があります。
動産の遺産分割手続
宝石や腕時計などの財産的価値が比較的高いものから古本や洋服など財産的価値が比較的低いものまで、いずれも相続人全員の合意のもと、誰が相続するかなどの取り扱いを決めることは変わりません。
ただ、財産的価値が比較的低いものについては、通常、遺産分割協議書に記載せず、適宜形見分けとして分配や処分をします。
これに対して宝石などの財産的価値が高いものについては、後々のトラブルを回避するため遺産分割協議書に記載します。
不動産や預貯金のように名義変更などの手続があるわけではないので、遺産分割協議書の作成ができたら、動産を取得する相続人に引渡しをして完了となります。
終わりに
一口に動産といっても様々なものがあり、その評価方法や取り扱いは異なります。
特に親の形見である宝石などの場合、大切に扱いたいですよね。
評価方法や遺産分割協議書への記載方法がわからなくてお困りの方は、一度専門家への相談をおすすめします