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相続放棄ができないケースとは。できない場合の解決策も紹介

被相続人が亡くなった際、相続財産として相続人に引き継がれるのは現金、預貯金、不動産などプラスの財産だけではありません。相続財産には借金やローンの返済義務、その他の債務などマイナスの財産も含まれます。
そのため、相続が相続人にとって必ずしもメリットになるとは限りません。場合によっては、「相続によって親の残した借金を背負ってしまった」という事態も想定されます。
そういった事態を避けるため存在するのが相続放棄という制度です。ただし、相続放棄を行うには一定の制約があります。
本コラムでは、相続放棄ができないケースと、相続放棄ができない場合の対処法を解説します。

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が、被相続人(亡くなった方)の財産に対する相続権の一切を放棄することです。
つまり、相続放棄を行うことによって、相続人は被相続人の残したプラスの財産を相続できなくなる代わりに、借金などマイナスの財産を引き継がなくて済みます。
なお、相続放棄の具体的な手続きについては、当事務所のコラム『相続財産に借金がある場合の相続手続きはどうすれば良いの? 相続人が知っておくべき相続債務の実態と対策』をご参照ください。

相続放棄ができないケース

相続放棄ができないケースには、主に次の4パターンがあります。

① 相続放棄の期限を過ぎてしまった
② 相続放棄をする前に、相続財産の全部または一部を処分した
③ 相続放棄をした後で、相続財産の全部または一部を隠したり消費したりした
④ 相続放棄の手続きに不備があった

以下、順に解説します。

相続放棄の期限を過ぎてしまった

相続放棄には、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内という期限があります(民法915条1項)。実務上、この期間を相続放棄の熟慮期間と呼びます。
ここでいう「相続の開始」とは被相続人が亡くなった時を指します。また、相続放棄の熟慮期間は、相続人が、被相続人が死亡した事実とそれにより自身が相続人となった事実の両方を知った時から起算します。
この期限を過ぎてしまうと、原則として相続放棄は認められなくなります。

なお、期限内に手続きをすることがどうしても難しい場合は、相続放棄の熟慮期間が終了する前に期間延長の申し立てをすることができます。

相続放棄をする前に、相続財産の全部または一部を処分した

相続財産を一部でも処分すると、法律上、その相続人は相続放棄ができなくなってしまいます(民法921条1号)。

具体的にどのような行為が相続財産の「処分」に当たるのか、その詳細はケースバイケースです。相続財産の管理・保存に必要な行為や被相続人の葬儀費用の捻出など、「処分」に当たらないと認められている行為も一部あります。

相続放棄をする可能性がある場合は、相続財産には手を触れない方が無難です。どうしても必要がある場合は、念のため、事前に司法書士などの専門家へ相談することをお勧めします。

あくまでも一例ですが、次のような行為には特にご注意ください。

・遺産分割協議への合意
・被相続人の預貯金の引き出し、解約、名義変更
・相続財産に含まれる不動産の解体・売却など
・被相続人が賃借していた不動産などの解約
・家具や家電など、財産的価値のある物品の廃棄・譲渡・売却など
・車の廃棄・譲渡・売却など
・被相続人の債務(借金、税金、入院費、その他生前に利用したサービスの料金など)を、被相続財産の中から支払うこと
・携帯電話の解約

相続放棄をした後でも、相続財産の全部または一部を隠匿、もしくは消費するなどをすると単純承認と判断されて、法律上その相続放棄は無効となります。相続放棄後は相続財産に触らないようにしましょう。(民法921条)
やむを得ない事情がある場合は、事前に司法書士などの専門家へ相談してください。

相続放棄の手続きに不備があった

手続きに不備があると、相続放棄は認められません。その場合、家庭裁判所からその旨の連絡と追完(足りない資料などを補うこと)の指示があるはずなので、速やかに従うようにしましょう。 追完を行わないまま相続放棄の期限を過ぎてしまうと、相続放棄ができなくなってしまうためご注意ください。

相続放棄ができないとどうなる?

上述したいずれかの理由により相続放棄ができなくなった場合、法律上、その相続人は全ての相続財産を相続する意思があるとみなされます。結果、借金なども全て相続することが自動的に決まってしまうのです。これを法定単純承認といいます。

相続放棄ができない場合の対処法

相続放棄ができない場合に考え得る対処法をケースごとに紹介します。

やむを得ない事情があって、相続放棄の期限が過ぎてしまった場合

自分が相続人になったことや、自分が相続する財産の内容について知ることができなかった「やむを得ない事情」がある場合には、期限後も例外的に相続放棄が認められる可能性があります。
何らかの事情で相続放棄の期限が過ぎてしまった場合は、諦めず司法書士など相続の専門家へご相談ください。相続放棄が認められる可能性があります。

相続放棄が却下された理由に納得がいかない場合

相続放棄の申述をしたものの家庭裁判所に却下されてしまった場合、その決定に不服があれば、裁判所へ異議申し立てをすることも可能です。この異議申し立ての手続きを即時抗告といいます。相続放棄の申述は家庭裁判所に対して行いますが、相続放棄の即時抗告は高等裁判所に対して行います。期限は、却下の告知を受けた日の翌日から2週間以内です。
即時抗告の具体的なやり方や抗告状の書式については、裁判所のWebサイトが参考になります。
参考:裁判所|即時抗告

相続放棄の手続きに不備があった場合

相続放棄の手続きに不備があると、家庭裁判所からその旨の連絡が来ます。
家庭裁判所から手続きに不備がある旨連絡を受けた場合には、速やかに家庭裁判所の指示に従い、足りない資料を追加で提出(追完)しましょう。
相続放棄の期限内に追完をすれば、手続きの不備は解消され無事相続放棄ができます。

相続放棄ができず、借金を相続してしまった場合

相続人同士の話し合いの結果、他に借金を引き継ぐ相続人が決まっている場合には、その人を引受人とする債務引受を行うことで借金の返済を免れられる可能性があります。
債務引受とは、自身が負っている借金などの債務を、第三者(引受人)に肩代わりしてもらうことです。債務引受は債務者(自分)、債権者(お金を貸している金融機関など)、引受人の三者で交渉し、合意することで成立します。

借金返済の負担が大きい場合は、債務整理を検討する余地もあります。
債務整理とは、借金の減額、免除または支払いの猶予を受けるための手続きで、当事者の状況や希望に応じて複数の方法があります。引き継いだ借金の返済ができるかどうか不安な場合は、一度、司法書士や弁護士へご相談されることをお勧めします。

相続した財産を他の相続人に譲りたい場合

金銭や不動産などプラスの財産を他の相続人に譲りたい場合は、相続後に、その財産を改めて譲渡することも可能です。

相続した財産を手放したいとき

管理の負担や心情的な理由で相続した財産を手放したい場合は、その財産を第三者へ譲渡または寄付する方法があります。
また、相続した財産が土地の場合、土地国庫帰属制度を使ってその土地を手放せる可能性もあります。
参考:政府広報オンライン|相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」

相続放棄ができない!そうならないための予防策

相続放棄に関する疑問は早めに解消する

繰り返しになりますが、3カ月の期限を過ぎてしまうと、相続放棄は原則としてできなくなります。そうならないためにも、次のような場合は、司法書士などの専門家へお早めにご相談ください。

・身内が亡くなったが、自分が相続人に当たるのかどうかわからない
・被相続人の財産状況がわからない
・相続放棄をするべきかわからない
・相続放棄をしたいけれど、手続きの方法がわからない

相続財産の調査を確実に行う

被相続人の財産状況に関する認識を誤ったまま、相続放棄の期限を過ぎてしまうケースもあります。そのような事態を防ぐため、相続財産の調査は借金などマイナスの財産の有無を含め確実に行うようにしてください。
期限内に確実な調査を行うため、司法書士などの専門家をご利用いただくのも一つの方法です。
また、可能であれば、相続が発生する前からご家族で話し合い、将来相続財産になり得る財産を整理しておくこともお勧めします。

相続財産の取り扱いは専門家に相談する

前述の通り、相続財産に関して何らかのアクションを起こすと、それが相続財産の処分とみなされ相続放棄ができなくなる可能性があります。
そうならないため、相続財産の取り扱いについては、司法書士などの専門家へ事前に相談するようにしてください。

家庭裁判所の指示には速やかに従う

相続放棄の手続きに関し、家庭裁判所から不備がある旨の連絡があった場合は速やかにその指示に従いましょう。
「相続放棄の照会書」が送られてきた場合も早めに回答するようにしてください。相続放棄の照会書とは、相続放棄が申述人の意思によるものかどうかを確認するための書類です。期限内に適切な回答をしなかった場合は、手続きの不備となります。

まとめ

相続放棄ができない場合は、なぜできないのか、本当にできないのか、まずは状況を把握することが肝要です。その上で、ケースごとに適した対処法を速やかに行う必要があります。
また、相続放棄を行う際は、事前に制度を理解し適切な対応をすることも重要です。
相続放棄ができない場合、またはそうならないよう備えたい場合は、ぜひ一度司法書士へご相談ください。

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