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団体信用生命保険を利用して住宅ローンを完済した場合の手続はどうなる?現役司法書士が徹底解説

団体信用生命保険という制度をご存知でしょうか。
これは住宅ローンの融資をする銀行のための保険で、万が一ローン返済中に借主が亡くなっても、ローン残高に相当する金銭を保険金として受け取り、ローンの返済に充当する制度です。
なお、借主が住宅ローンの借入時にこの保険に加入していることが必要です。

団体信用生命保険によって住宅ローンが完済になった場合は、抵当権等の担保権が消滅しますが、登記簿から自動的に担保が消えるわけではなく、法務局で抹消登記の手続が必要になります。

本コラムでは団体信用生命保険を利用した場合の相続登記から抵当権抹消登記までの流れや必要書類、また、団体信用生命保険に加入していなかった場合に手続を詳しく解説していきます。

団体信用生命保険により住宅ローンを完済した場合

団体信用生命保険による住宅ローンの完済は相続発生後のため、以下の2つの登記が必要となります。

①故人から相続人への相続登記
②抵当権抹消登記

抵当権抹消登記をするために必要な書類は住宅ローンを組んでいた金融機関から発行されることがほとんどです。
発行までの流れは金融機関ごとに多少異なりますが、相続登記を先に完了させ、完了後の登記簿の提出が必要になるケースもあります。

相続登記には下記のような書類が必要になります。

①故人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、改製原戸籍
②故人の住民票除票
③相続人の戸籍
④相続人の住民票
⑤相続人の印鑑証明書
⑥遺産分割協議書
⑦固定資産評価証明書

なお、上記の必要書類は一般的なものであり、個々のケースにより必要書類が追加になることもあります。

また、抵当権抹消登記には下記のような書類が必要になります。

①抵当権解除証書、弁済証書
②抵当権の登記識別情報又は登記済権利証
③抵当権者の委任状

これらの書類を金融機関から受け取ることが必要です。

団体信用生命保険に加入していなかった場合

多くの金融機関は団体信用生命保険に加入することを義務付けていますが、一部の金融機関ではオプションとなっていたり、借主の健康状態によっては加入ができない場合もあります。

仮に故人が団体信用生命保険に加入していなかった場合は、住宅ローンは残ったままになります。
したがって、債務として相続人に相続されることになります。

では、住宅ローンの返済義務を負いたくないと考えた場合はどのような対応をすればよいのでしょうか。

相続放棄

相続放棄とは、家庭裁判所に申立てることではじめから相続人ではなかったとみなす制度です。
相続人としての一切の権利義務を放棄するため、住宅ローンの返済義務を相続することはありません。
ただし、相続放棄をするには故人の死亡から3ヶ月以内に手続をする必要があることや、負債だけでなく預金や不動産などプラスの財産も一切引き継ぐことができなくなるため慎重に検討することが必要です。

住宅ローン以外に特段の財産がない場合に検討すべき方法といえるでしょう。

任意売却

任意売却とは、住宅ローンを残したまま、不動産を売却することです。
通常の売買の場合は売却代金で住宅ローンの残高を完済しますが、任意売却の場合は売却代金では完済できないのです。
それにもかかわらず抵当権を解除するため、担保が消えて債務だけが残ることになります。
したがって住宅ローンを貸し付けている金融機関などの債権者から同意を得る必要があります。

金融機関の同意が得られるかどうか、残った債務をどのように返済していくのかを検討し、いずれもクリアできそうであればメリットがあるといえるでしょう。

住宅ローンを返済しながら居住し続ける

住宅ローンの残高が少ない場合や、相続後も住宅ローンの返済が可能な場合には、住宅ローンを返済しながら、家に住み続けることもできます。
このとき、家を取得する相続人が併せて住宅ローンの返済義務も全て引き継ぐといった遺産分割協議をすることもあると思います。
この「特定の相続人が住宅ローンを引き継ぐ」という内容の遺産分割協議は有効なのでしょうか。
遺産分割協議は金融機関の介入なしに行うことができるため、疑問が出ると思います。
この点、特定の相続人が債務を引き継ぐ旨の遺産分割協議が成立しても、それはあくまで相続人間での取り決めとして有効となるに過ぎず、それを金融機関に主張することはできません。

民法では、借金等の債務は相続開始と同時に遺産分割をすることなく、法定相続分に応じて当然に各相続人に承継されることになります。
相続人が自由に債務の負担割合を決定できるとすれば、資力のない相続人に全ての債務を引き受けさせるようなことも考えられ、債権者の権利が害されるからです。
こういった趣旨なので、債権者が承諾すれば、特定の相続人が全ての債務を引き受けることも可能です。

住宅ローンを返済しながら、家に住み続ける場合は、故人から相続人への相続登記を行ったうえで、住宅ローンを担保するために設定された抵当権の債務者を故人から家を相続した相続人へ変更する登記が必要となります。

抵当権の債務者変更登記

既に説明したとおり家に住み続けながら住宅ローンの返済を続ける場合は、抵当権の債務者変更登記をする必要があります。
債務者変更登記の方法は、特定の相続人が債務を引き継ぐ遺産分割協議を金融機関が承諾したかどうかによって異なります。

特定の相続人が債務を承継する旨の遺産分割協議が成立し、金融機関がこれを承諾した場合

相続を原因として、債務者を故人から相続人へ変更する登記が必要になります。
遺産分割協議書や相続人の印鑑証明書が必要になります。

債務についての遺産分割協議がなく、金融機関の承諾を得て、特定の相続人が他の相続人の債務を引き受ける免責的債務引受契約が成立した場合

いったん相続を原因として法定相続人全員を債務者とする債務者変更登記をしたうえで、免責的債務引受を原因として特定の相続人への債務者変更登記を行います。

免責的債務引受の契約が必要となるため、金融機関で所定の手続きを踏む必要があります。

終わりに

住宅ローンが残ったまま相続が発生してしまった場合、団体信用生命保険に加入していればローン自体はなくなりますが、その後の抵当権抹消登記は法務局での手続きとなり、ご自身で行うには難しい場合もあるでしょう。
また、団体信用生命保険に加入していなかった場合には、相続放棄を含め、どのような方法を検討するべきなのか迷ってしまうこともあるかと思います。

抵当権の抹消登記のやり方がわからない、相続が発生したけど住宅ローンが残っていてどうすればよいかわからなくてお困りの場合は、一度専門家へ相談されることをおすすめします。

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