【相続放棄の有無の照会】親族が過去に相続放棄したことあるかを調査したい!
「最近親族が他界したけど、自分は相続人ではないから関係がない・・・」
実は、このように考えていると危ないかもしれません。
仮に、ある日、亡くなった人(故人)にお金を貸していた人から、「本来の相続人は全員相続放棄をしてあなたが相続人になったので、お金を返してください」と、連絡がきた場合、あなたならどうしますか?
このような事態を防ぐためにも「相続放棄の申述の有無の照会」という制度を理解しておく必要があります。
目次
相続はある日突然やってくる!?
まずは次のようなCaseをみてみましょう。
1. 東京都練馬区に住むAさんが他界しました。Aさんの妻や父母は既に他界しており、親族はAさんの子供3人と兄であるBさんだけです。Aさんの子供とBさんは仲が悪く、連絡は10年近くとっていません。
2. Aさんは住んでいた練馬区や千代田区に自宅などの不動産を持っていました。しかし、Aさんには個人事業を行なっていた際の多額の借金があり、借金が不動産の金額を上回る場合は相続人であるAさんの子供は相続放棄をする可能性がありました。
3. BさんはAさんが亡くなったことは人づてに聞いたものの、Aさんの借金については知らなかったので、Aさんの持つ不動産は子供が相続するだろうし、相続人でない自分は後でこっそりお墓参りにいけば良い程度に考えていました。
4. Aさんにお金を貸していた人から、Aさんの子供は全員相続放棄をしてBさんが相続人になりました。Aさんの借金を返してくださいと通知がBさんのもとへ急に届きました。
相続人の順位は、①子供→②親→③兄弟姉妹</b >と決まっています。
そのため、Caseのように、Aさんの子供全員が相続放棄をして両親も他界しているような場合では、本来相続人でなかったBさんが相続人になります。
上記のCaseのような出来事が急に起こると、パニックになる人がほとんどだと思います。
それでは、このような事態を防ぐためにはどうしたら良いのでしょうか。
相続放棄の申述の有無の照会で自分が相続人になっているかわかる?
本来相続人であった人が相続放棄をしているかどうか知りたい場合は、裁判所に「相続放棄の申述の有無についての照会」をしましょう。
「相続放棄の申述の有無についての照会」は、故人の相続人が相続放棄をしたかどうかを、家庭裁判所に対して問い合わせる手続です。
今回のCaseでは、Bさんの先順位の相続人であるAさんの子供たちが相続放棄をしたかを家庭裁判所に確認することができます。
Aさんの子供たちと疎遠になっているBさんにとってはありがたい制度ですね。
相続放棄の申述の有無についての照会を申請することができる人
それでは、相続放棄の申述の有無についての照会の申請は、誰でもできるわけではありません。申請をすることができるのは、下記の2パターンの人です。
①相続人
②債権者といった被相続人(故人)の利害関係人
申請はどのようにして行う?必要書類は?お金はかかる?
相続放棄の申述の有無についての照会は、故人が亡くなった時の住所地を管轄(担当)する家庭裁判所に行います。
住所地が分からない場合は、故人の住民票の除票や戸籍の附票で確認することができます。
申請に必要な書類(東京家庭裁判所の場合)は下記の通りです。相続人と利害関係人どちらが照会するかによって必要書類が若干異なります。
1.相続人が照会する場合
①相続放棄の申述の有無についての照会申請書
②被相続人(故人)の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
③照会者と被相続人(故人)の戸籍謄本(照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本)
④照会者の住民票(本籍地が表示されているもの)
⑤相続関係図
⑥委任状(代理人に委任する場合)
それでは順番に、これらの書類の内容について解説していきます。
まず、①の相続放棄の申述の有無についての照会申請書は、管轄の家庭裁判所のホームページで入手することができます。
東京家庭裁判所の場合は、下記の書類になります。
※それぞれの家庭裁判所で様式が違う場合があるため、注意が必要です。
(東京家庭裁判所ホームページhttps://www.courts.go.jp/tokyo-f/vc-files/tokyo-f/file/30210002.pdfより抜粋)
次に、②の被相続人(故人)の住民票の除票は、被相続人が死亡したという事実と最後に住んでいた住所地を確認するための書類です。
さらに、③の照会者と被相続人(故人)の戸籍謄本は、照会者と被相続人の関係性を確認するための書類で、これだけで関係性がわからない場合は、別途両者の関係性がわかる戸籍謄本と除籍謄本の提出を求められることがあります。
これらに加えて、④の照会者の住民票は、照会者の住所地を確認するために利用し、⑤の相関関係図は、被相続人と相続人の関係を表した図です。相関関係図は基本的には手書きで作成したもので大丈夫です。
最後に、⑥の委任状は、代理人に委任する場合のみ必要になります。
なお、相続放棄の申述の有無についての照会で代理人になれるのは弁護士だけですので、注意しましょう。
2.利害関係人が照会する場合
①相続放棄の申述の有無についての照会申請書
②被相続人(故人)の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
③照会者の資格を証明する書類(個人の場合は照会者(個人)の住民票、法人の場合は商業登記簿謄本または資格証明書)
④利害関係の存在を証明する書面(コピー)
⑤相関関係図
⑥委任状
相続人が照会する場合との大きな違いとして、③の利害関係の存在を証明する書面があります。
相続人ではありませんので、故人と本当に利害関係があったことを証明することが必要となります。
故人との利害関係を証明する書類として、例えば、お金を貸し借りしたことを証明する契約書(金銭消費貸借契約書)や訴状、競売申立書、競売開始決定、債務名義等の写し、担保権が記載された不動産登記簿謄本などがあります。
3.手数料
最後に、相続放棄の申述の有無についての照会をする際の手数料ですが、これは無料となっています。
手数料が無料であれば安心して照会できますね。
おわりに
今回のコラムでは、相続放棄の有無の照会について解説しました。
この制度を利用することによって、故人の相続人が相続放棄をしたかどうかを、家庭裁判所に対して問い合わせて確認することができます。
もし、先順位の相続人が相続放棄をしている場合は、故人が残した財産は、お金や不動産といった資産よりも借金といった負債の方が多い可能性が高いです。
本来であれば自分で故人の財産を調査できれば1番良いのですが、先順位の相続人と疎遠になっているような場合に、そのような調査をすることは簡単ではありません。
相続放棄は自分が相続人になったことを知った時から3ヶ月以内にしなければならず、時間的な余裕もありません。
先順位の相続人が相続放棄をしている場合は、基本的には自分もすぐに相続放棄をしたほうが賢明です。