故人が生前に使用していたクレジットカードはどうすればいい?解約方法や注意点を現役司法書士が徹底解説。
相続発生後、故人が所有していた不動産の名義変更、預貯金の解約手続など、様々な相続手続が必要となります。
故人がクレジットカードを所有していた場合は、カードの解約手続も相続手続の一つです。
カード代金は口座引き落としの場合がほとんどであるため、クレジットカードの存在自体を忘れがちですが、実は注意点も多くあります。
日本では現在8割以上の方がクレジットカードを所有しているというデータもありますので、たくさんの方に関係する話ではないかと思います。
本コラムでは故人のクレジットカードの解約手続や注意点について詳しく解説していきます。
目次
相続発生後も解約しないとどうなる?
相続発生後、クレジットカードを解約しないとどうなるのでしょうか。
これには、以下の3つのデメリットがあります。
年会費が請求され続ける
クレジットカードの中には年会費などが発生しているものもあります。
この費用は、たとえカードの名義人が亡くなったとしても、カード自体を解約しない限り、請求され続けます。
悪用されるおそれがある
これは相続発生後に限定される話ではありませんが、カードが使用できる状態のままだと第三者に不正利用されるおそれがあります。
家族がそのまま利用することはできない
故人のクレジットカードの暗証番号やセキュリティコードを把握している場合は、家族がそのまま利用することを考えるかもしれません。
しかし、あくまでも故人名義のカードなので、たとえ家族で上記のような番号を知っていたとしても、そのまま利用することは不正であり、犯罪となってしまいます。
以上のようなデメリットがあるため、故人のクレジットカードについては、相続発生後速やかに解約することが望ましいです。
クレジットカードは相続できる?
家族がそのまま利用すると不正利用になってしまいますが、正式に相続をして引き続きカードを利用することはできるのでしょうか。
結論から申し上げますと、それはできないと考えてよいでしょう。
ほとんどのクレジットカードは規約により契約者が亡くなった場合は解約(退会)と定められています。
したがって、そのカードをどうしても利用したい場合は、家族の方が改めてカードの審査を受けて契約をし、新しくカードを発行することになります。
ポイントやマイルはどうなる?
クレジットカードには利用金額に応じたポイントやマイルが付くこともあります。
カード自体は相続できないとしても、このポイントやマイルの取り扱いはどうなるのでしょうか。
ポイント
ポイントは、原則として相続の対象となりません。
カード会社によっては相続の対象となることもあるため、詳細はカード会社への問合せをするのが確実となります。
ただ、ほとんどのカード会社では規約上でポイントは相続の対象とならないことが明記されていたり、そもそも相続発生後のポイントの取り扱いについて明記していないことが多いようです。
マイル
ポイントとは異なり、マイルは相続の対象となることが原則です。
マイルとは主に航空会社のカードで、利用金額に応じて貯まっていくものです。
ただし、マイルを相続する場合は相続手続が必要であり、手続期間が短いことも多いため注意が必要です。
プリペイド式のクレジットカードのチャージ残高は相続の対象
プリペイド式クレジットカードとは、あらかじめ指定の金額をチャージしておき、チャージされた残高の範囲内で利用できるものです。
通常のクレジットカードは上限までは使用できるため、「気づいたら使いすぎてしまった」ということもありますが、プリペイド式ではそういった心配が軽減されます。
プリペイド式クレジットカードでも、カード自体は相続の対象ではありませんが、チャージ残高が余っていれば、その残額については相続の対象になります。
また、クレジットカードの中にはクレジットカードと電子マネー(SuicaやPASMOのことです)が一体化したものがありますが、プリペイド式の電子マネー残高についても同様に相続の対象になります。
ただし、ここで注意したいのがチャージ残高などを相続人が利用した場合、相続を承認したことになるため、相続放棄することができなくなります。
クレジットカード利用代金の未払いがあり、相続放棄も検討している場合は要注意です。
未払金は相続の対象となる
クレジットカード自体は相続の対象ではないので、カード利用代金の未払分があっても払わなくてよいかというと、そんなことはありません。
未払分は債務として相続の対象となります。
未払分は相続人全員に、法定相続分割合で相続されます。
したがって、相続人のうち特定の方が未払分全額を支払った場合は、他の相続人に対して自己の法定相続分を超える部分の金額を返還請求することができます。
なお、未払分をどうしても支払いたくない場合には、相続放棄をすることで支払義務は無くなります。
この場合は相続開始を知ってから3ヶ月以内に管轄の家庭裁判所で手続をすることが必要です。
クレジットカードの解約手続の流れ
クレジットカードにはかなり多くの種類がありますが、まずはカード会社に連絡をして、名義人が亡くなったので解約したい旨を伝えましょう。
電話のみで解約できない場合には解約手続書類を郵送してもらえますので、指示に従って必要書類を揃えて手続をしましょう。
なお、カード代金の未払いがある場合は口座から引き落とされるのを待つか、請求書を郵送してもらい払込をすることが必要です。
以下、注意点を解説します。
カード会社への連絡時の注意点
各カード会社のカスタマーセンターなどに電話して、契約者が亡くなったので解約したい旨を伝えます。
問い合わせ先の電話番号はカードの裏面や、ホームページ等で確認することができます。
連絡した際に、クレジットカードの番号や有効期限、契約者名などを聞かれるので、カードやこれらの情報がわかる資料を用意しておきましょう。
相続開始時点の債務残高の証明書や、利用明細が必要な場合はこの時に申し出ましょう。
解約手続きの対応は各カード会社によって異なりますが、相続人からの連絡であれば、電話のみで解約手続が完了できることもあります。
なお、未払いの利用残高がある場合は、未払金の清算方法を確認のうえ、指示された方法にしたがって生産をすれば解約完了となります。
未払分の清算は、通常は一括返済となります。金額が大きく一括返済が難しい場合はカード会社に相談をしましょう。 相続人からの申出であれば、分割払いを受け付けてもらえることもあるようです。
電話のみで解約できなかったら
電話のみで解約ができない場合、カード会社の指示に従い、必要書類を収集します。
必要書類はカード会社の規約や相続人によっても異なりますが、一般的には以下のような書類が必要となります。
①契約者の死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピー、戸籍(除籍)謄本、住民票除票など)
②契約者と届け出た方の関係がわかる書類(戸籍謄本など)
③各種届出書(カード会社所定の書式)
故人がクレジットカードを契約していたのかどうかわからない場合
故人がクレジットカードを利用していたかどうかわからない場合、確認方法としては以下のようなものがあります。
・通帳の履歴(引き落しの履歴)
・利用明細
・オンラインの取引履歴
・カード会社からの郵便物
これらを確認しても不明な場合は、信用情報機関に対して個人情報の開示請求を行う事で、契約しているカード会社や利用残高を確認することができます。
信用情報の開示請求は相続人の一人から行うことができます。請求は、故人との関係性がわかる戸籍謄本など、必要書類を集めて信用情報機関に提出して行います。
特に相続放棄するかどうかの検討のためにカードの利用の有無や未払分を確認したい場合は、相続発生後速やかに調査に入りましょう。
その他の注意点
家族カードについて
クレジットカードには、本会員以外に、家族が同じカードを手頃な価格で利用できる「家族カード」という制度があります。
家族カードの名義自体はもちろん家族ですが、あくまで本会員の契約に付帯するサービスであり、引き落とし口座や利用限度額、利用方法は原則として本会員と共通します。
そのため、本会員の方が死亡した場合は、それに伴い家族カードの利用もできなくなるのが原則です。
なお、本会員死亡時に家族カード利用による未払金がある場合でも、支払義務は家族会員が単独で負うわけではなく、相続人全員に法定相続分で引き継がれます。
カードに付帯している傷害保険など
クレジットカードの中には付帯サービスとして、旅行中の傷害保険などの保険契約が付いているものがあります。
亡くなった契約者が旅行中の事故による死亡、入院、盗難被害など所定の事由に該当すれば、契約者本人の死亡後でも保険金を受け取ることができます。
保険は全般的に「自動的に支払われるもの」というのは無いので、保険事由に該当しそうだと感じた場合はお早めに手続をしましょう。
終わりに
相続手続の中で意外と見落としがちなクレジットカードですが、様々な注意点があります。
他の相続手続との兼ね合いでいつ解約すればよいかわからない、信用情報機関に問い合わせたいが手続がわからないといった方は一度専門家への相談をおすすめします。