遺産相続で絶縁した兄弟がいる場合はどうすればよい?対処やトラブルを避ける方法を解説

遺産相続をする際には、遺産分割協議を行なって、相続人間でどのように遺産を分けるかについて決定する必要があります。
しかし、中には相続人で連絡が取れない人がいて、どのように対処をすれば良いのかわからないといったご相談をいただくことがあります。
本記事では絶縁した兄弟がいるような場合には、どのように対処をすれば良いのか、トラブルを回避する方法を解説していきます。
目次
1 絶縁した兄弟にも相続権があるので連絡は必須
絶縁した兄弟にも相続権が認められているため、必ず連絡をしなければなりません。
相続人から廃除をされている場合でない限りは、相続権は必ず認められるものとなっております。また、被相続人の生存中に相続放棄をすることもできません。
絶縁した兄弟抜きで遺産分割協議を行なったとしても、その協議自体は無効となってしまいます。
また、無効の協議を前提に実際に遺産を分割した場合であっても、後になって絶縁した兄弟から法定相続分に基づく遺産分割を主張される可能性があり、より複雑な手続きが必要となることがあります。
2 絶縁した兄弟姉妹との遺産相続の進め方
上述した理由から、遺産分割協議は絶縁した兄弟姉妹と進める必要があります。
もっとも絶縁しているといっても、さまざまなパターンがあるため、典型的な例をいくつか挙げながら、それぞれの対処方法について解説をしていきます。
(1)相手の連絡先を知っている場合
相手の連絡先を知っている場合には、単刀直入に被相続人が亡くなった旨と遺産分割協議に参加して欲しい旨を伝えると良いでしょう。
連絡の際には、トラブルや口論に発展してしまう可能性を避けるために、なるべく確執のない方から連絡をするとなお良いでしょう。
また、必ずしも対面で協議を行う必要はないので、電話やメールなどで意思を確認するだけでも十分となっています。
(2)相手の連絡先を知らない場合
相手の連絡先を知らない場合には、所在調査を行う必要があります。
所在調査は戸籍の附票や住民票などを取得することによって、現在の住所を確認することが可能となっています。
手続きの方法がわからない場合には、専門家に依頼するのがおすすめとなっています。
(3)相手の生死すら7年以上不明でわからない場合
相手の生死が7年以上わかっていないような場合には、失踪宣告をすることによって、相続人から除外することが可能となっています。
失踪宣告は、生死不明となっている人を死亡した扱いにすることができる制度であり、法律上の利害関係のある人が家庭裁判所に申告を行い、生存が確認できず公告期間を経過することによって効力が発生することとなります。
失踪宣告には、普通失踪(7年以上生死不明)と特別失踪(災害や事故で1年以上生死不明)の2種類があり、家庭裁判所に申し立てることで法的に死亡とみなされます。
普通失踪の場合、生死不明となってから7年が経過すると、法律上死亡したものと扱われます。
また、船舶の沈没などの事故に遭った場合には、危難が去った後1年で特別失踪として失踪宣告が認められることとなります。
もっとも、失踪者が生存することが確認された場合には、本人が失踪宣告の取り消しを家庭裁判所に請求することが可能となっています。
失踪者が生存していたことを相続人が1人も知らなかった場合には、遺産分割や相続についてはやり直す必要はありません。
しかしながら、1人でも失踪者の生存を知っていた場合には、遺産分割が無効となってしまうため、注意が必要となります。
(4)遺産が欲しくない場合には自身が相続放棄すればOK
仮に遺産が欲しくないといった場合には、相続放棄をすることとなります。
相続放棄は、相続が始まったことを知った時から3ヶ月以内に行わなければならないため、注意が必要となります。
また、相続財産を勝手に処分した場合、家庭裁判所が単純承認(相続を放棄できない状態)と判断する可能性があるため、慎重に対応する必要があります。
(5)対応が難しい場合には専門家に相談するのがおすすめ
ここまでに所在調査や失踪宣告、相続放棄など、自身で手続きを進めなければならないものが登場しました。
このような手続きを利用することは、一生の間でそう多くはないため、うまく進められるかわからないような場合、また、絶縁状態の兄弟姉妹への対応が難しい場合には、専門家に依頼をして手続きや対応を任せることも可能となっています。
3 絶縁した兄弟姉妹に遺産相続をさせない、残さない方法とは
絶縁した兄弟姉妹に遺産相続をさせたくない、遺産を残したくないといった方もいらっしゃいます。
このような場合には、相手に対して相続放棄をお願いすることとなります。
単なる私怨ではなく、遺産をどうしても相続しなければならない事情がある場合には、それを説明することで解決することもあります。
また、絶縁した兄弟姉妹に相続人廃除や相続欠格が認められる場合には、相続人から除外することが可能となっています。
(1)よっぽどな事情がない限りは相続権を認めるのが基本
上述のように相続人から除外するのは非常にハードルが高く、基本的には相続権を認めることとなります。
後に紹介しますが、相続人廃除や相続欠格などが認められるような、よっぽどの事情がない場合には、相続人から除外するのは難しいと言えるでしょう。
(2)相続人は遺留分(最低限度の遺産)を受け取る権利があることを留意しておく
仮に無理やり相続人から除外をして遺産分割を行なった場合であっても、相続人には遺留分を受け取る権利があるということを忘れてはいけません。
遺留分とは法定相続分に則った最低限度の遺産のことを指します。
遺留分を有する相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。この請求がなされた場合には、一度分割した財産から遺留分を支払わなければならないため、非常に複雑な手続きとなってしまいます。
特に請求が遺産分割の数年後になされたような場合には、すでに遺産の一部を処分してしまっている相続人がほとんどであり、より事態が複雑化してしまう可能性があります。
遺留分侵害額請求は必ずしも裁判によって行使する必要はありません。
しかしながら話し合いがまとまらない場合には、調停、最悪の場合には裁判にまで発展してしまうものであるため、遺留分を請求された場合には、相手としっかりとコミュニケーションを取るようにしましょう。
(3)相続人廃除を試みる
相続人廃除とは、被相続人の生前に虐待や重大な侮辱などがあった場合に、被相続人が家庭裁判所に申し立てを行うことで、相続人から除外することができる制度となっています。
もっとも、この説明の通り、被相続人しか申し立てができないものとなっているため、生前に被相続人が申し立てをしていない場合には、相続人廃除は認められません。
(4)相続欠格事由に該当しないか確認する
相続欠格とは、被相続人を故意に殺害するなどの行為があった場合に、自動的に相続人から除外する制度となっています。
具体的には以下のようなものがあります。
・故意に被相続人または相続について先順位もしくは同順位にあるものを死亡するに至らせ、刑に処せられた
・被相続人が殺害されたことを知って、これを告発または告訴しなかった
・詐欺や強迫によって、被相続人に遺言をさせる、遺言を撤回、取り消し、変更させるまたは妨げる
・遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿
もっとも、相続人廃除や相続欠格が認められる場合であっても、その相続人に子どもがいる場合には、代襲相続というものが認められる点には注意が必要となります。
代襲相続とは、相続の開始前に相続人となるはずであったものが死亡、廃除、欠格などによって相続権を失った場合に、その子どもが代わりに相続をすることができる制度のことを指します。
そのため、相続権を失った方が、子供を通じて相続財産を取得する可能性もあるということとなります。
(5)遺言書を作成しておく
絶縁中の兄弟姉妹に遺産を残したくない場合には、遺言書を作成しておくことも有効な手段となっています。
遺言書の中で、特定の相続人に対して相続をさせない旨を記載しておくこととなります。
単に相続させない旨の記載ではなくとも、相続人廃除は遺言によっても行うことができるため、廃除の旨を記載しておくのも有効な手段でしょう。
もっとも、遺言で相続人廃除の意思を示すことは可能ですが、それだけでは廃除は確定せず、実際に廃除を行うには家庭裁判所の審判が必要です。そのため、遺言には『廃除の請求を遺言執行者が行うこと』を明記する必要があります。
遺言書に相続人廃除の記載をした場合には、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をすることとなりますが、この手続きは被相続人の生存中にしか行えません。
(6)他の相続人に生前贈与をしておく
相続が発生する前に、他の相続人に生前贈与をしておくことも有効な手段といえるでしょう。
生前贈与によって、被相続人の死亡後に相続財産がほぼ残っていない状態にしておくことで、トラブルを回避することができる場合があります。
なお、この方法を採った場合であっても、遺留分侵害額請求をされてしまう可能性は残っているため、注意が必要となります。
4 絶縁中の兄弟姉妹との遺産相続トラブルを回避する方法
絶縁中の兄弟姉妹との遺産相続トラブルは、よくいただくご相談のひとつとなっております。
このようなトラブルを回避するために、できることをご紹介しておきます。
(1)別の兄弟や相続人を仲介してやり取りを行う
絶縁中の兄弟姉妹と不仲な場合には、別の兄弟や相続人に連絡をしてもらうことで、やり取りを試みましょう。
冒頭でも説明したように、遺産分割協議は対面で参加しなければならないものではないため、確執のない人物が接触して、相続に関しての意思を確認するだけで、トラブルを回避することができる場合があります。
(2)直接のやり取りは避けて手紙・メールでやり取りを行う
電話や対面でのやり取りの場合には、口論に発展してしまう可能性が否定できません。
そのため、手紙やメールなどの文面上でのやり取りで、冷静に手続きを進めるのもひとつの手段といえます。
(3)弁護士などの専門家を仲介してやり取りを行う
直接のやり取りや手紙、メールなどを利用した場合であっても、冷静に話し合いを進めることが難しいと考えられる場合には、弁護士などの専門家に依頼することもひとつの手段といえます。
弁護士等の法律問題の専門家は、交渉のプロでもあります。また、法知識の専門家が話し合いの場にいることによって、双方が冷静に話し合いを進めることができる可能性が非常に高くなっており、大変おすすめとなっています。
また、相続財産に不動産があるような場合には、司法書士に依頼をすることで、そのまま登記手続きまで依頼することができるため、話し合い後の煩雑な手続きでもサポートを受けることが可能となっています。
(4)遺言書作成などの相続対策をできるだけしておく
ここまででご紹介したように、被相続人の生存中からできる相続対策は多々あります。
生前贈与や遺言書の作成などによって、相続発生後のトラブルを回避することができるため、できる限り対策をしておいた方が良いでしょう。
もっとも、遺留分などの制度もあるため、あまりに偏った対策をしてしまうと、逆にトラブルの発生原因となってしまうこともあるため、注意が必要となります。
5 元々仲が良かった兄弟と遺産相続トラブルで絶縁状態になってしまったら?
元々仲が良かった兄弟と、遺産相続のトラブルを通じて絶縁状態になってしまった場合の対処法も、ここまででご紹介した方法を利用することで解決をすることができます。
遺産相続をどうするのかについて決定した後に絶縁状態となってしまった場合には、専門家の介入の余地はありませんが、相続について何も決まっていない状態の場合には、早期に権利関係を確定させる必要もあるので、しっかりと交渉をした方が良いでしょう。
6 まとめ
遺産相続の際に、相続人間でトラブルが発生するというのは、少ない話ではありません。
また、すでに絶縁状態となっている相続人についてはどうするのか、といったご相談も多くいただきます。
絶縁状態の相続人が存在する場合であっても、遺産相続の協議に参加しなければなりませんが、さまざまな対処方法があります。
どうしても対応が難しい場合には、専門家に依頼することで、早期解決できることもあります。
また、相続問題では、相続人の間で発生するトラブルだけではなく、必要書類の収集や登記などの面でお困りの方も多数いらっしゃいます。
もし、相続関係でお困りの場合には、一度専門家に相談することをおすすめしています。
SAKURA司法書士法人では、東京都を中心に相続に関するトラブルを専門的に取り扱っております。
現在相続問題でお困りの方は、ぜひご相談にお越しください。