共有名義の不動産の相続はどうなる?対処法や注意点などを詳しく解説

共有名義の不動産を持っているものの、手続きリスクなど相続についてよく理解できていないという方は多いのではないでしょうか。不動産を適切に管理・運用するためには、共有名義の不動産を相続する際の留意点について理解しておくことが重要です。
本記事では、共有名義の不動産を相続する方に向けて、民法に基づく相続の考え方や手続き、リスクと対処法などを詳しく解説します。
目次
(1)共有名義の不動産は法定相続人が相続権を持つ
亡くなった人(被相続人)の共有持分は、他の共有者が相続するわけではありません。不動産の共有者が亡くなると、亡くなった人の共有持分は相続の対象となり、法定相続人が相続権を持ちます。
民法では、被相続人の配偶者は常に法定相続人となり、その他の親族の優先順位について以下のように規定されています。
●第1順位:被相続人の子
●第2順位:被相続人の直系尊属(父母や祖父母など)
●第3順位:被相続人の兄弟姉妹
被相続人が遺言書を残していない場合、被相続人が所有していた不動産は、遺産分割終了まで法定相続人全員の共同相続状態になることを押さえておきましょう。共同相続状態を解消するためには、相続人全員による遺産分割協議を行う必要があります。
では、被相続人(父)と相続人(長男)が2分の1ずつ共有している不動産の相続割合について検討してみましょう。他に母親と長女がいる場合、共有者の父親の相続財産は、原則として母親(被相続人の配偶者)が2分の1、長男と長女が4分の1ずつ相続することになります。
(2)不動産の共有名義人が亡くなったときの7つの相続手続き
共有名義の不動産の相続人が分かったところで、ここでは、相続が発生してから相続税の申告・納付までの主な流れを紹介します。
1.遺言書が存在するかどうかを確認
2.相続人を確定
3.相続財産を調査
4.遺産分割協議を行う
5.遺産分割協議書の作成
6.相続税の申告と納税
7.相続登記をする
一つずつ解説します。
1.遺言書が存在するかどうかを確認
まず、遺言書の有無を確認することが重要です。原則として、相続ではその相続財産を所有していた人の意思がもっとも尊重されます。そのため、被相続人が遺言書を残している場合、共有持分を引き継ぐ人が指定されていれば、基本的にはその記載内容にしたがって引き継がれていきます。
なお、自筆証書遺言の場合、登記申請前に家庭裁判所の検認が必要です。検認とは、相続人の立ち会いのもと、家庭裁判所で遺言書を開封する手続きのことを指します。公証役場で作成する公正証書遺言や法務局の遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言の場合、検認は不要です。
2.相続人を確定
遺言書がない場合、被相続人の戸籍謄本を収集して親族関係を調査し、相続人を特定します。この時、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が見つからなかった場合は、除籍謄本や改製原戸籍を集めます。
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければならず、協議に参加していない法定相続人の存在が明らかになれば、協議をやり直す必要があります。そうしたことにならないよう、認知された非嫡出子や元配偶者との子どもなどがいないか、法定相続人に関する調査を入念に行うことが重要です。
3.相続財産を調査
法定相続人の特定と同時に、不動産や預貯金、有価証券といった、相続の対象となる財産を調査します。
不動産の調査については、被相続人に送付されている固定資産税の納税通知書などで確認できます。ただし、共有名義の不動産については、その代表者にしか納税通知書が送付されないため、見落としのないように注意が必要です。
預貯金に関しては、通帳やキャッシュカードなどで金融機関を特定した上で、残高証明書や取引履歴を調べます。
4.遺産分割協議を行う
被相続人の遺言書がないときは、法定相続人の全員で遺産分割協議を行い、共有持分や預貯金、有価証券などの遺産を相続する人、相続の方法などについて決定します。
前述した民法の法定相続分にしたがって相続する場合は、その割合どおりに相続登記します。相続人全員の同意があれば、法定相続分と異なる割合で相続することが可能です。
5.遺産分割協議書の作成
相続人全員で遺産分割の内容に合意したら、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書の作成は必須ではありませんが、相続人間での協議結果を文書という形に残すことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。また、遺産分割協議書は、不動産の相続登記や預貯金口座の名義変更などを行う際に必要な場合があるため、作成しておくと良いでしょう。
6.相続税の申告と納税
遺産分割協議書を作成したら、相続税の申告と納税を行います。期限は、相続の開始を知った日(基本的には、被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。不動産を相続する場合は相続税の課税の仕組みについても把握しておきましょう。
相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた額に課税されます。基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。
基礎控除額 = 3,000万円+600万円×法定相続人の数
相続した財産の評価額の合計が基礎控除額を上回る場合は、期限内に申告・納税する必要があります。期限に遅れると、相続税の負担を軽減する特例を適用できなくなったり、無申告加算税や延滞税といったペナルティが発生したりする可能性もあるため注意が必要です。
なお、相続税の負担軽減に活用できる制度とは、土地の評価額を減額できる「小規模宅地等の特例」のことです。自宅や事業用宅地の相続時に、一定の要件のもと、相続税の評価額を減額できます。
7.相続登記をする
共有持分の不動産名義を相続人に変更するためには、相続登記が必要です。相続登記は、令和6年4月1日から義務化され、不動産を相続したことを知ったときから3年以内に申請しなければなりません。
正当な理由なく、登記を怠り、催告に応じなかった場合は、10万円以下の過料に処されることもあります。
相続登記が義務化された背景には、土地の持ち主が分からないまま放置される状況が続き、未登記の土地があると公共事業の実施の遅れや、景観の悪化などにつながるということがあります。遅滞のないように留意しましょう。
(3)共有名義の不動産を相続するリスクと生前にできる相続対策
不動産を共有名義で相続することには、いくつかのリスクがあります。相続する場合は、リスクを理解した上で生前にできる相続対策についても押さえておくと良いでしょう。
<共有名義の不動産を相続する主なリスク>
・不動産の売却やリフォーム・増改築を自由に行えない
・権利関係が複雑化しやすい
・不動産がきちんと管理されない
一つずつ解説します。
リスク1:不動産の売却やリフォーム・増改築を自由に行えない
共有名義の不動産の売却やリフォーム、増改築を行うためには、共有名義人全員の合意を得なければなりません。共有者のうち1人でも反対する人がいると、自由に不動産の売却や改修などを行えないという点に注意が必要です。
リスク2:権利関係が複雑化しやすい
共有持分の相続が何度も行われ、被相続人の子や孫などに相続されることで、共有者が増え、権利関係が複雑になりやすいという側面もあります。
共有者の数が増えることで、前述したような不動産の売却やリフォーム、増改築などの合意を得にくくなります。場合によっては、面識のない相続人に引き継がれていき、相続の際に連絡を取ることすら難しくなる可能性もあるでしょう。また、共有者が高齢で認知症になれば、合意の意思確認を取ることが困難になります。
★事例|土地の売却が進まないことも
以前、当事務所で、祖父とその兄弟の3人が共有していた更地について、孫のAさんから売却に向けたご相談を受けたことがあります。
相続登記がされないまま世代が移っていたため、まずは戸籍をたどって相続関係を調査しました。その結果、**土地の権利を引き継いだ相続人は、数十人に増えていたことが分かりました。**Aさんと面識のない方も多く、家族の連絡網だけでは連絡が取れないため、戸籍の附票等で一人ひとりの住所を確認していきました。
しかし、確認した住所に手紙を送っても、返信をいただけない方がいました。相続人とその住所は分かっても、売却についての意向を確認できず、話し合いを進めることが難しい状況となりました。
時間と手間をかけて相続人とその住所を調べ上げても、それだけで売却まで進められるわけではないのです。
リスク3:不動産がきちんと管理されない
不動産を管理できず、放置するような状況が続くケースもあります。前述のように、不動産の売却や改修などには、共有者間の合意が必要ですが、意見がまとまらず、その不動産について関与する人がいなくなる可能性もあるでしょう。
不動産を適切に管理しないとさまざまな弊害が起きます。例えば、建物の老朽化が進み、景観が悪化する可能性もあるでしょう。建物を放置し続けると、その建物は国や自治体によって「管理不全空家」に認定され、放置した人は助言や指導を受ける対象となります。指導に従わず、勧告を受けると、固定資産税の軽減措置を受けられなくなる可能性があります。
(4)生前にできる相続対策
ここまで、共有名義の不動産を相続するリスクについて見てきました。しかし、生前にいくつか対策を講じておくことで、不動産の共有に関する様々なリスクを未然に回避できる可能性があります。
<生前にできる相続対策>
・遺言書の作成
・共有持分の生前贈与
・家族信託
1つめが、遺言書の作成です。被相続人が、その不動産を単独で相続させることを記載しておけば、相続人間で共有状態になることを回避できます。ただし、遺言書の作成には、遺留分への配慮が必要です。専門家と相談して作成することをおすすめします。
2つめに挙げている、共有持分の生前贈与とは、相続を開始する前にすでに共有状態にある場合、共有持分を親族などに生前贈与することです。例えば、長男と次男の2人で不動産を共有していた場合、長男が亡くなり、子どもがいる場合には、当然ながら法定相続人である子どもが相続することになります。この場合も、長男が生前に、次男に生前贈与すれば、次男の単独所有とすることが可能です。
最後に、家族信託を利用する方法もあります。家族信託とは、その物の所有者である委託者と所有者ではない特定の受託者が信託契約を締結し、物の管理や処分を任せる制度のことです。死亡時に不動産を承継する人についても、信託契約に定められます。この家族信託の活用によっても、共有状態での不動産相続を避けることが可能です。
(5)共有名義での不動産相続は回避できる?単独名義に変える方法
ここでは、共有不動産を単独名義に変える方法について解説します。
1.一人の相続人が代償金を支払う
相続人のうち1人が不動産を取得し、他の相続人に対して金銭などで精算する「代償分割」を行う方法が有効です。
例えば、4,000万円の土地を法定相続人4人で代償分割する場合、1人がその土地を相続する代わりに、残り3人に対して1,000万円ずつ支払います。
代償分割をすれば単独所有となるため、所有者の意思で売却や活用できます。注意が必要なのが、不動産を相続する人が、他の相続人に代償金を支払う経済力が求められる点です。不動産の評価額や代償金額などについて、事前に相続人間できちんと話し合う必要があります。
2.不動産を現金化して分割
不動産を売却して現金に変え、得られた金銭を各相続人で分ける「換価分割」を行う方法もあります。共有持分を単独で売却するより、不動産全体を売却したほうが、分割した1人あたりの受取額は多くなるといわれています。
ただし、換価分割を行う場合は、全ての相続人が不動産を使用する予定がなく、協議の時点で相続人全員が売却について合意している必要があるという点を押さえておきましょう。
(6)不動産相続後に共有状態を解消することもできる
共有名義の不動産を相続しても、以下の方法により共有状態を解消できます。
<共有状態を解消する方法>
・不動産の全部売却
・共有持分を売却・移転・買取
・共有持分を放棄
一つずつ詳しく解説します。
1.不動産の全部売却
共有者全員の同意を得た上で、不動産を売却すれば共有状態を解消できます。前述した換価分割と同様に、売却して換価することで、共有者間で公平に分割できる点が利点です。
2.共有持分を売却・移転・買取
共有持分を共有者以外の第三者に売却する「一部売却」という方法もあります。全部売却のケースと比べて、不動産の買主を探しにくく、相場より売却額が下がりやすいという点に注意が必要です。ただし、持分のみの売却であれば、他の共有者の合意は必要ありません。そのため、全部売却における合意を得られなかった場合などに取られることが多いといえます。
また、共有者のうち1人が不動産の単独所有を希望している場合、持分をその共有者に移転するという選択肢もあります。また、自身が不動産の売却に反対しているときは、他の共有者の持分を買い取ることも可能です。この持分買取には、共有者の持分を買い取るだけの資金力が必要となります。
持分移転や持分買取を行う場合は、きちんと不動産の相場を把握した上で価格を設定しましょう。
3.共有持分を放棄
持分を手放すことも可能です。持分の放棄には他の共有者の同意は不要で、放棄した持分は、原則として他の共有者に帰属します。
持分を放棄する場合、その対価として金銭などを受け取れないという点に留意しましょう。持分放棄は、共有不動産の金銭的な価値がほとんどない状態で持分の売却や他の共有者への移転が難しい時に、検討されることがあります。
(7)共有名義の不動産相続のまとめ
本記事では、共有名義の不動産を相続する場合の、法定相続人や手続き、リスク、対策などを解説しました。共有名義人が死亡すると、原則、民法が定める法定相続人が相続します。しかし、共有名義の不動産を相続することには、自由に不動産の売却や改修ができないといった点や、権利関係が複雑化しやすいといった様々なリスクがつきまといます。
不動産を適切に管理・運用していくためには、本記事で紹介した様々なリスクを理解した上で、共有者間・相続人間で不動産について考え、どのように扱っていくかを話し合うことが重要です。

