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遺言書の書き方でよくある失敗例とその対策。遺言書の内容や形式に注意しよう

2023年11月29日

 

 

近年、遺産分割や相続対策の一環で遺言書を作成する方が増加しています。遺言書の記載内容は個人の意思として尊重されるものですが、要件を満たしていないために無効となる事態が起きているのも事実です。遺族間でも遺言書の有効性をめぐる争いが生じるなど、遺される人の立場を考えると、作成には十分注意しなければいけません。

この記事では、遺言書が無効になるケースについて、失敗事例や遺族間で生じるトラブル、遺言者にできる対策を解説します。訴訟問題に発展しない正しい遺言書を作成し、特定の人物にきちんと資産を遺すためにも、参考にしてください。

遺言書の失敗例|遺言無効となりうる3つのケースとは?

正しく作成された遺言書は何年経っても効力が保たれますが、作り方次第で無効になるケースがあるのも事実です。ここでは遺言書の失敗例について、3つのケースを挙げて解説します。

1.遺言書作成の要件を満たしていないケース

遺言書が無効になるケースの1つ目は、各遺言書の要件どおりに作成できていない場合です。以下の表に、遺言形式別の失敗例をまとめてあります。

遺言書の形式 無効になる原因
自筆証書遺言 ●財産目録を除く全文について遺言者が自書していない
●2人以上の共同で作成された痕跡がある
●遺言者自身による署名・押印がない
●作成年月日が特定できない
●財産内容が不明確
公正証書遺言 ●遺言書の原本に遺言者・証人2名・公証人による署名・押印がない
●遺言者が公証人へ遺言内容を口授していない
●作成時に2名の証人が立ち会っていない
●将来の相続人が証人として立ち会った
秘密証書遺言 ●遺言者が遺言書へ署名・押印していない
●前項で押印した印鑑と違うもので封印してある
●作成時に2名の証人が立ち会っていない
●将来の相続人が証人として立ち会った
●そもそも封印されていない

上記の事項が無効と判断されるのは、各遺言形式の条件に反するためです。ここからは、形式ごとのルールを確認しておきましょう。

自筆証書遺言のルール

「自筆証書遺言」は遺言形式のなかでもっとも作成しやすく、遺言者自身の手書き●押印によって認められます。その際の必須項目は、以下のとおりです。

●作成年月日
●遺言者の氏名
●遺言内容の全文
●遺言者の押印(実印が望ましい)

なお、民法の改正により、2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言では、相続財産の目録のみ手書きが不要となりました。したがって、前述の要件を満たしていれば、財産目録は通帳コピーの添付やパソコン作成の書面でも認められます。

【参考記事】
相続に関するルールが大きく変わります|法務省
民法第968条|e-Gov法令検索

公正証書遺言のルール

「公正証書遺言」は、2人以上の証人の立会いのもと、公証役場で作成する遺言形式です。証人には、遺言書が遺言者の正常な判断で作成されたものと明らかにする役割があります。そのため、遺言者と役場の公証人がやりとりする現場を終始見守る必要があります。

なお、公正証書遺言の条件は、以下のとおりです。

●遺言者が公証人に遺言内容を直接口頭で伝える
●相続人ではない2名が証人として立ち会う
●公証人に遺言書を作成してもらう
●遺言書原本に遺言者・証人2名・公証人の全員が署名・押印する

公正証書遺言は、遺言者以外の人物が作成に関わるため多少の手間がかかりますが、その分、確実性の高い遺言書が仕上がります。また、原本は公証役場で保管されるため、相続人から遺言書の真正性が問われることもありません。
【参考記事】
民法第969条|e-Gov法令検索

秘密証書遺言のルール

「秘密証書遺言」は、遺言者が作成した封書済みの遺言書を公証役場へ持ち込み、その存在を認めてもらう遺言形式です。前述の公正証書遺言と同様、証人2名と公証人の立ち合いが必要ですが、遺言書の内容は遺言者以外知りません。

秘密証書遺言の作成ルールは、以下のとおりです。

●遺言者が遺言書へ署名・押印する
●遺言者が遺言書を封じ、前項で押印した印鑑と同じもので封印する
●公証役場で公証人と相続権のない2名の証人が立ち会う

秘密証書遺言は遺言者による署名・押印が必要なだけで、そのほかの記述はパソコンで作成したり代筆してもらったりしても構いません。
【参考記事】
民法第970条|e-Gov法令検索

2.遺言内容の不備により一部無効になるケース

遺言書が無効になるケースの2つ目は、遺言内容の不備によるものです。書類自体は形式どおりに作成されていても、内容が法に反したり具体性に欠けたりする場合は、その部分のみ無効となる可能性があります。

たとえば、以下のケースでは注意が必要です。

●遺留分が侵害されている場合
●金額・土地面積などの具体的な相続情報がない場合
●誰に・何を・どのようになど相続方法が明確ではない場合 など

また、遺言書を加筆修正する際に訂正方法が誤っている場合も、無効になりうるため注意しましょう。

3.遺言書に法的効力のない内容が記載されているケース

遺言書の効力は民法で定めてあり、具体的には以下のとおりです。

遺言書の効力 詳細
相続の割合や分配方法の指定 遺言書では、国が定める相続目安(法定相続分)に関係なく、遺言者が相続の分割や分配方法を自由に決定できる。
遺言書の記載内容は、法定相続分よりも優先される。
遺産分割の禁止 遺言書では、相続人同士でおこなう遺産分割協議を最大5年間禁止できる。
相続人のなかに未成年がいたり相続開始時のトラブルを防止したりする目的で記載されるケースが多い。
第三者への遺贈 遺言書に記載があれば、相続権をもたない第三者(内縁の妻や愛人、お世話になった人、特定団体など)にも遺産を贈与できる。
特別受益の持ち戻しの免除 遺言書では、遺言者が生前贈与した住宅購入費用や婚姻費用・事業資金・学費援助などの「特別受益」を、相続分から差し引く(持ち戻す)ことを免除できる。
特別受益のあった相続人でも、相続財産を減額されずに済む。
相続人の廃除 特定の相続人へ遺産を渡したくない場合、遺言書へ「○○を相続人から廃除する」という文言と理由を記載すれば相続権をはく奪できる。
特定の相続人が、遺言者に対して虐待や侮辱などの非行を繰り返していた場合に、用いられるケースが多い。
内縁の妻と子の認知 遺言者に愛人や隠し子がいた場合、遺言書に「子どもを認知する」と記載しておけば、相続開始と同時に遺言者の子として認められ、相続人に追加できる。
後見人・未成年後見人の監督人の指定 遺言者に未成年の子どもがいる場合、遺言書で当該未成年者の「後見人」とその後見人を監督する「未成年後見監督人」を指定できる。
当該未成年者が成人するまでの財産管理や監護・教育の委任が可能。
遺言執行者の指定 遺言書では、相続開始時に生じる預貯金・土地の名義変更といった事務手続きを担う「遺言執行者」を指定できる。
ほかの相続人による、勝手な財産処分の制限が可能。

上記以外の内容は法的効力をもたないため、遺族へのメッセージとして扱われます。遺言書を作成するなら単なる手紙にならないよう、法的効力を踏まえた内容を記載しましょう。

遺言書にまつわるトラブルと訴訟

遺言者がどんなに形式や内容に配慮した遺言書を作成しても、相続人同士でトラブルや訴訟が生じるのはよくあります。以下は、遺言書が関与する揉めごとの一例です。

トラブルの例 解決方法
あるはずの遺言書が見つからない 遺言者の持ち物や貸金庫などを整理して探す
公証人役場の遺言検索システムも活用
遺言書を勝手に開封した 家庭裁判所で検認してもらう
遺産分割後に遺言書が発見された 決定していた遺産分割内容と遺言書のどちらを優先するか、再度協議する
相続人全員が同意すれば、遺言書以外の分割方法でも構わない
遺言書記載の財産と実際が異なる 相続財産を調査し、遺産分割協議をおこなう
遺言内容が不公平 遺産分割協議で交渉する
遺言無効確認訴訟・遺留分侵害額請求などの訴訟を提起する
見知らぬ第三者への相続が記載されている
遺言者に隠し子がいた

また、このような遺言書にまつわるトラブルは、相続を争う訴訟へ発展するケースも珍しくありません。そうならないためにも、遺言者自身が相続開始後に起こりうる訴訟を把握し、遺言書作成時から回避できるよう留意しましょう。

ここからは、遺言書から発展しやすい訴訟について紹介します。

遺言無効確認訴訟

遺言無効確認請求訴訟とは、遺言書の無効を裁判所に認めてもらう訴訟です。無効の判決を得られると、遺言書に基づいた財産分配を防げます。

なお遺言書の無効を主張する理由として、相続人から寄せられる代表的な意見は以下のとおりです。

●認知症などで遺言者の遺言能力が欠けていた
●遺言者が重要な要素を錯誤していた
●第三者が遺言者をそそのかした など

遺言無効確認訴訟をおこなう際は、遺言の無効性を立証できる要素を見つける必要があり、解決には一定期間と費用を伴います。

遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求とは、「全財産を××へ相続する」など、遺言書によって相続額に極端な差が生じた場合に、取り分の少ない人が多い人へ返還請求できる手続きを指します。ただし行使権をもつのは、法定相続人のなかでも以下の人物のみです。

●配偶者
●直系卑属(子・孫)
●直系尊属(親・祖父母)

遺言者の兄弟姉妹には請求権がなく、返還請求の割合は民法第1042条に定めてあります。なお、請求手続きは当人同士による口頭のやりとりでも可能ですが、解決しなければ調停・訴訟へ発展する可能性があります。
【参考記事】
遺留分|東京弁護士会
民法第1042条|e-Gov法令検索

遺言書を無効にしないための5つの対策

遺言書は、遺族が相続に困ったり遺産をめぐって争ったりするのを防ぐ目的で作られる場合が多いものです。時間と労力をかけて作成した遺言書を無効にしないためにも、遺言者は以下の対策を心がけましょう。

1. 要件を満たした遺言書を作成する
2. 遺言能力のあるうちに作成する
3. 遺言執行者を決めておく
4. 公正証書遺言で残す
5. 専門家へ相談する

それぞれ解説します。

1.要件を満たした遺言書を作成する

前述のとおり、遺言書には形式ごとに特定のルールがあります。自己流の作成は失敗のもとになるため、専門書などを参考にして要件を満たす遺言書へ仕上げましょう。

2.遺言能力のあるうちに作成する

遺言書は、遺言者自身が元気なうちに作成するのがおすすめです。「××歳になったら作ろう」と先伸ばしにしていると、その年齢になったときに認知症やなんらかの病気を患っている可能性もあります。判断能力の欠如は遺言書の無効につながるため、遺言能力のあるうちに作成しておくのがよいでしょう。

3.遺言執行者を決めておく

相続をスムーズに進めるには、各種事務手続きを滞りなく進めてくれる遺言執行者の設定も大切です。遺言執行者は相続人からの選定もしくは、弁護士にも依頼できます。遺産の勝手な分配を防ぐためにも、信頼できる人物を決めておきましょう。

4.公正証書遺言で残す

遺言書を無効にしたくない場合は、公正証書遺言を作成するのも一つの方法です。前述のとおり、公正証書遺言は決められた手順に沿って作成されるため、なんらかの不備やミスで遺言書が無効になるケースはほとんどありません。自筆証書遺言に比べると作成に時間がかかりますが、失敗したくない方や法的効力のある遺言書を作成したい方は検討してみましょう。

5.専門家へ相談する

初めて遺言書を作る方や作成手順に不安のある方は、司法書士や行政書士などへ相談するのがおすすめです。専門家の意見を取り入れられれば、法的有効な遺言書を作成できる可能性が高く、保管や執行など遺言者の管理が行き届かない場面も安心できます。失敗や訴訟といったトラブル回避にもつながるなど、十分な対策が可能です。

まとめ

遺言書が関与するトラブルは、多くのケースで相続をめぐる訴訟に発展していきます。遺言書を作成する際は基本的な知識を押さえ、場合によっては専門家に相談しながら進めるのが、遺産をイメージどおりに分配できる方法となるでしょう。相続を失敗しないためにも、さまざまな対策を検討してみてください。

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